第3話 最初の乱闘
白神 恋「...なん...だと?」
ろくな奴では無いだろうとは思っていたが、流石に予想外すぎた。
白神 恋「...」
奥羽 壮「どうした?怖気付いたか?まあ仕方ないよな。今東京で一番輝いてるのはこのLGなんだから。そのリーダーとなると...」
白神 恋「...興味湧いてきたな。1つ質問させてくれ。白神 愛って知ってるか?」
奥羽 壮「ああ...半年前、歌舞伎町東急タワーで謎の組織に襲撃にあったという子か?」
白神 恋「そして、その謎の組織はNYでは無いかと。違うか?」
奥羽 壮「違わないな。それがどうした?」
ここでその子の兄と明かしても仕方がない。俺は後5時間は待ってみる必要があるのだ。
白神 恋「別に。どうってことはない。ただ、一般人を襲撃するような組織の頭と同じ空間にいるのはとは過ぎったが。」
奥羽 壮「ほう、一般人ねぇ...。俺からすると、マフィアは一般人の括りには入らないがな。それがうちのシマに来たとすりゃ、大問題だろう?」
白神 恋「...どういうことだ。」
某アクションゲームの主人公みたいな返しをしてしまった。だが実際そう言わずにはいられない。歌舞伎町タワーのことをシマと呼んだことも気になったが、それ以前の問題として
白神 恋「マフィアとはどういうことだ。」
奥羽 壮「この町は実質俺が支配しているから、知っているのも当然だろう。もちろん深い闇の部分についてもな。」
どうやら思ったより侮れない組織のようだ。NYと言うのは。
奥羽 壮「そして今日もまたねずみが入ってきたようだ...白神恋さん?」
白神 恋「なるほど。どうやらわかって俺に近づいできたんだな?だったら話が早い。」
面倒ごとは起こしたくなかったが、心の底では怒りがふつふつと沸き上がっていた。
白神 恋「単刀直入に聞く。愛に対する襲撃は、お前の指示によるものか?もしそうだしとしたら、何故襲撃した?」
奥羽 壮「ふっ...質問に質問で返すようで悪いが、今お前が待っている相手について何を知っているんだ?例えば...裏の顔とか。」
斑目さんについて?帝都連合の大幹部で、人事と指揮を取り仕切っていて...裏の顔?全く聞いた事がない...。あの人の性格的に可能性は無くないがな。悪い意味で。
奥羽 壮「なるほど...言ってる事の意味が分からないようだな。あの人も報われないな。それじゃあちょっと教えられないかなぁ。」
あの人?斑目さんのことか?そういえばさっき、この店にマフィアのドンのような服装の男について聞いてきたな...。もしかして裏の顔って...
白神 恋「NYの関係者か?オーナーとか?」
奥羽 壮「それ以上は本人に聞いてみるんだな。流石の俺でも、教えられない。」
白神 恋「力ずくにでも、その口を開かせてやろうか?」
奥羽 壮「ほう...面白い。」
とにかく、わからないことが多すぎる。ヒントだけでも欲しい。その為なら...命を賭けてもいい。
白神 恋「口を聞ける程度には生かしてやる。最も、その後どうなるか知らんがな。」
奥羽が手を上げた。その瞬間、客は男と女以外店員含め全員退店した。
奥羽 壮「さあ...やり合おうぜ。」
白神 恋「ああ...行くぞぉぉ!!!」
すぐさま相手の腹目掛けて拳を振り上げるが、両手の肘で受け止められ、つばぜり合いになった。力は五分五分と言った所か。だが、体格の影響でこちらが、負ける可能性が高い。ならば...スタイルを変えていくしかない。
俺の戦い方は中国拳法から大きな影響を受けているが、どの流派でもない我流である。その為名付けは適当だが、主に「パワースタイル」と「ダンサースタイル」と「テクニシャンスタイル」で(自分の中で)通している。今回のようなタイマンの時は、パワースタイル、対集団に置いては「ダンサースタイル」、武器を持った相手には「テクニシャンスタイル」という感じで使い分けている(厳密では無い)。が、前述したように俺はあまり体格が丈夫では無い方であり、昼に戦った威勢だけのいいヒョロガリはまだしも、今回のように力だけなら拮抗している相手だとジリ貧になる。
ならば、「ダンサースタイル」で打開するしかない。狙いは...相手の足だ。
ついにつばぜり合いに負け、後ろに倒れ込む...フリをしながら両手を地面に先に付けながら体を支え、それを重心にしながら回転。そして相手の足に蹴りを入れることに成功した。追い討ちにさらに蹴りを入れようとしたが...素早く逃れられる。
奥羽 壮「今の円舞綺麗だったな。中国拳法か?見たこと無い流派だ。事前情報と違う。」
白神 恋「どこで仕入れた情報なのか知らないが、一応中国拳法だぞ。」
奥羽 壮「だが、残念ながら弱点を見つけてしまったんだよなぁ。」
再び拳を振り上げる...振りをしながら相手を避けるように回転。すかさず蹴りを入れる。今度は相手の後頭部に...その瞬間、突然物体が現れた。椅子だ。カウンターチェアだ。相手も高速で対応してきたのだ。怯んだ俺は足を下げ、椅子を受け止めるのに専念、その隙に相手にタックルを決められた。
白神 恋「ぐっ...!」
奥羽 壮「おっとすまなかったな。うっかり。でも、別にルールとかないからいいよな。」
まさか躊躇なく物を使ってくるとは想わなかった。ということは、こっちも使っていいと言うことだよな。ていうか、とにかく得物がないと戦いずらい!自らのことを知れば知るほど、そういう感想が出る。得物がない場合のリーチが短すぎる。もちろん、長すぎてもダメだ。特にこの狭い空間なら、得物さえあれば独壇場なのだが。...と辺りを見回してみると、包丁を見つける。あれほどのリーチなら...しかし遠すぎる。しかも上手いことショーケースの近くにある。あれじゃ、思い切り飛び込まなければ取れない。しかも取るのに手間取れば身体全体が無防備になるだろう。しかし、代わりを探したが、丁度いいのが見つからなかった。仕方ない。
白神 恋「うおぉ!」
全力で飛び込み、包丁を回収...しようとしたが、その瞬間その右手に蹴りが入った。幸い大した負傷にはならなかったが、その包丁は相手の腕に収められていた。
奥羽 壮「危ねぇ危ねぇ。反応できて良かった〜。本気で負けてたかもしれないな。しかし、寿司屋の包丁って細長いな。これくらい鋭いと、腹刺された時、簡単にぷすりと行けそうだ...なぁ!」
包丁を突き刺すように突進してきた。しかしその所作は不慣れな様子だった。これなら簡単にカウンター出来るだろう...得物があればの話だがな!直感的に何かないか探す。そして仕方なく椅子を手に取り、それを思い切り投げ飛ばした。が、簡単にすかさず蹴りで躱される。それそこそこ重量あるぞ!?
仕方なく、カウンターに足を乗せ、相手の上を飛び越えるように...と思ったが、思い切り脛を切られた。そりゃそうなるだろうが、上手く着地できず、転がる形になった。
白神 恋「くっ...」
幸い傷は浅い。走って逃げる余力はある。...が、相手はそれを許さない。本気で死を覚悟した。
奥羽 壮「おっと、安心していいぞ。俺の方もあんたを殺したくない。なんなら傷の手当てしてやってもいいぞ?」
白神 恋「...なんだと?」
奥羽 壮「俺は義に厚い人間でね...無駄な殺しはしないのさ。俺を本気にさせたくなかったら、退店することはオススメする。」
包丁を落とした。どうやらほんとに殺す気は無いようだ。ここは素直に従った方が良さそうだ。
女1「リーダー。貴方が本当に義に厚い人間であるなら、反乱の芽は摘んでおくべきではないかと。そうでないと、報われない方たちが多すぎます。」
おう女、余計なこと言うな。
奥羽 壮「安心しろ、こいつの立場上、そんな大それたことは出来ないだろう。」
女1「しかし...」
奥羽 壮「NYは極道の組織なんかじゃない。掟とかどうでもいいし、俺自体がルールなりゃそれでいい。それで歌舞伎町を制圧出来たんだから。」
女1「...」
奥羽 壮という男はどうやらかなり傲慢な男のようで、しかしかなりのやり手だそうだ。。ああそういや、歌舞伎町と言えば。
白神 恋「なあ、今日少し蛇竜をしごいてやったんだが、その際に下っ端のやつが、2ヶ月後歌舞伎町を始め東京は終わると言ってたんだが、心当たりないか?」
奥羽 壮「2ヶ月後?うーん...クリスマスとか大晦日とか、お正月とか?いや知らないな。本当にそんな事言ってたのか?」
白神 恋「ああ、まあ興味なかったら忘れてくれて構わない。俺もさっきまで忘れてたし。」
奥羽 壮「おお。頭の片隅には入れておこうか...」
白神 恋「ああ、後NYって、なんの頭文字なんだ?」
奥羽 壮「さあ?なんの頭文字だろうな?」
やれやれ、今日は本当に疲れる1日だった。結局斑目さんに会えず仕舞いだったし。それに寿司も食べなかったしな。もう1つの候補地だった「すしソルジャー」にでも行こうかな。
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