19.太陽

 曇っていた。

 明らかに。どうしようもなく。徹底的に。言い訳無用なまでに。

 ぶ厚い雲が東の空を覆っていた。

 ……全国的に曇りだって予報でも言っていたし、仕方がないかなぁ。

 とは思うものの、折角ここまで来たのだから、

 ……見たかったなぁ

 とも思う訳だ。

 毎日、早起きをすれば見られるとはいえ、一年に一度今日だけは特別。ある意味区切りのようなもの。

 だからこそ、だったのだけれど。

「仕様がない。帰ろっか?」

 傍らの友人に声を掛ける。いい加減体も冷えてきている。初日の出が見られないのなら、このままここでぼうっとしている理由もない。

「なんで?」

「なんでって、流石に無理でしょ。こんなだし」

「大丈夫、大丈夫。まだわかんないって」

 あっさりと言われた。

 その根拠はどっから来た? と思うし、同時にこの娘らしいとも思う。とは言え、寒いのは事実。

「なら、取り敢えず車に入ろ」

「ん~。もうちょっと見てない? 折角来たんだし、なんとなく予感がするのよね。それに、太陽は、喩え雨が降っていてもそこにあるのよ?」

 その言葉にそのまま外に佇む。ゆっくりと東の空が白く染まり、空と地の境に白い光が滲んでいく。

「うそ……」

「ほら大丈夫だった」

 日の昇る光の満ちる境界線、そこだけ切り取ったように厚く張った雲が途切れていた。

 そこに地上ならば何処ででも見ることのできる珍しくもない光景があった。なのに、現実ではないようなそんな錯覚を覚えてしまう。

 新しい太陽の光に照らされながら、魅入られたように動けずにいた。

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