第022話 異世界の魔神『カー・アウソー』。
入り口を塞いでおおよそ一時間、昨日聞こえた爆発音――もちろん昨日とは違い間近でのことなのでさらに大きな音が響いたんだけど――と共に、入り口を塞いでいた石塊が吹き飛ばされ、奥から続々と……いや、あれは迷宮の前に転移してきてるのかもな。
日中ということもあり、ハッキリと見えるそのシルエット……もちろん放置していたらどんどん増える、いつ何時襲いかかってくるかもしれないのでどんどん打倒して行くんだけどね?
こちらも昨日と同じようにおおよそ二時間で殲滅を完了した。
「ふむ、出てくる魔物の数は毎回同じくらいなのでしょうか?さすがにあれだけの数になると数を数えることも出来ませんでしたし」
「そもそもレーザーが地面を弾き飛ばす土煙とか、地面を焦がす煙で見透しも悪いからなぁ」
「まぁ、いいでしょう。ふふっ、落ちている魔石を拾ってもう一度やりましょう!」
「魔物相手とは言え、そこそこの大量虐殺をしておいて顔色一つ変えずに恐ろしいことを言う女子高生だな……」
結局丸一日掛かって3セットのスタンピードを起こした葵ちゃんだった。
「いや、スタンピードってそういうものなの?」
「細かいことを気にしたら負けだと思いますよ?」
「最初は俺が言う方だったのに言われる方になってるだと!?」
「ふふっ、私だって成長してますので!」
夕食を取り、風呂に入り、結局その日も寝たのは日付が変わってそこそこ時間が過ぎてから。
眠りについた俺をまたまた起こすのは、
「……なんだよ……またアラート音かよ……昼のスタンピードの続きか?……いや、昨日のけたたましい警戒音とは鳴り方が全然違うな……」
眠い目を擦りながら寝転んだままでマップ画面を呼び出す俺。
場所は……やっぱり迷宮の入り口みたいだな。でも数は一体だけなのか?それにアイコン枠の色が『白』だから敵対してるわけでもないみたいだし……。
表示されてるアイコンをタップ、さらに詳しく相手の情報を確認する。
名前は『カーくん』?……何なんだこいつは?アイコンの見た目も茶色いゆるキャラっぽいし。
「……どうかしたんですかいきなり?不審者ムーブ全開になってますけど」
「ああ、起こしちゃったかな?ごめんごめん。んー……そうだな、危険じゃないエイリアンを発見したってとこかな?」
「えっ?エイリアンですか?……いえいえ、それ、もの凄い大事じゃないですか!?私のこともちゃんと起こしてくださいよ!それってそこに映ってるんですか?」
自分のベッドから飛び起きる葵ちゃん。……そのまま俺のベッドに乗っかる感じなんだ?確かにそうしないとマップ画面が見づらいもんね?てか近い近い近い!過去一で距離が近いんだけど!?あとシャンプーで洗ってるわけでもないのに頭皮から良い匂いがする!!
「クッ、これがハニートラップというモノなのか……いきなりだとなかなかの破壊力だな……」
「ハニトラ?もしかして、この『丸っこいウナ○イヌ』みたいな外見の不思議生物は雌なんですか?」
「そういうこっちゃねぇよ……てか最近の女子高生もウナギ○ヌとか知ってるんだ?とりあえず俺も起きるから、ちょっとどいてもらってもいいかな?」
「えっ?あ、はい。……あっ……」
どうやら自分の体勢と俺との距離に気づいたらしい葵ちゃん。
その場から慌ててピョンと飛び退く。そんな恨めしそうな顔でこちらを睨むんじゃない、今はどんな表情をされても可愛らしく見えちゃうから!!
(???)
妾の名はカー・アウソー。
偉大なるアウソー族から生まれし初めての魔神である。
そんな妾がこの不毛の荒れ地に住み着いてから、一体どれほどの年月が経ったのだろうか……昔はこんな暑いトコやあらへんかったんやけどなぁ……おかげさんで、この穴ぐらから出ることもでけへんようなってしもたわ……わかってるやろけど皮肉やからね?
コホン、そう、妾はこの荒れ地の女王となるべく、いや、全世界の女王となるべく、悠久の時間をかけ、この迷宮の深淵で力を蓄えていたのだ!
そんな妾の、睡眠時間……やなくて、微睡みを邪魔する奴が現れたのは少し前のことである。
……愚かな……妾のこの力が開放されれば世界が滅亡するかも知れぬのだぞ!?
……急に穴ぐらが騒がしなったから何事!?かと思たら……おバカな誰かが入り口を埋め立てたからみたいなんやけど……なんやねんなその非常識な連中……ていうか、今まで何十年、何百年掛かって溜めてた魔力的なモノが二割くらい減ってるらしいんやけど?
たぶんこれが、ここの穴ぐらの奥にある変な玉がいうてた……なんやったっけ?ほら、あの……聞いたの随分前やからど忘れしてしもたわ。
そんな感じのアレが起こったから魔物が外にぎょうさん出て行ってしもたんやけど……。
まぁこの近所には荒れ地しかないはずやし?たぶん他所さんには被害とかないやろと思うけど……アホの子もこれに懲りたら穴ぐらの入り口を埋めるとか二度とせんやろしな?今回はええ勉強になったとおもて……いや、あんだけ魔物が出ていきよったんやからたぶん死んどるやろなアホの子……かいそうに。
そんな数百年ぶりの『愚かな人間との接触(?)』もあったが、それからはまた何事もなく、静かに寝て……瞑想に入っていた妾の穴ぐらが再び騒がしくなったのはそれから……数時間後。いったいなんやのんな!?数百年単位でヒマしてたのにいきなりせわしなさすぎやろ!?
次は何事やのんさ!?また懲りんと入り口でも埋めよったんか!?近所によっぽどのどアホでも引っ越してきたんか!?頭のオカシイ人間が隣人とか難儀やなこれ!!
そいやちょっと前に二人ほど穴ぐらに入ってきてたみたいやけど……入口あたりでウロウロしよっただけやし、ふっとい蛇見て逃げていきよったんと違うんか?あれか?びっくりした仕返しかなにかか?最近の若い子は無茶しょんな!
……それが、一日で三回続いた。
いや、何考えとんねん!?穴ぐらの魔力的なものが減るっちゅうたやろ!!
アレやで?うち、ここの管理人さんみたいなことしとるさけ、魔力的なものが全部なくなったら!……どうなるんやろ?詳しゅうはしらんねんけどな?
なんかこう奥にある変な玉もうるさ騒いどるしな!ほんまかなんわ……へぇ!すぐにいきますんで!
……久しぶりに奥に呼ばれたわ。
あれ、玉のくせにたまに小姑みたいにうるそなるからなぁ……玉だけに。
へぇ、へぇ、いや、ようわからんのですけど、たぶん人間がなんやてんごしてるみたいで……へぇ、わかりましたわ、いっぺん入り口まで見にいってきます……。
いや、外とかむっちゃ暑いっちゅうねん!そもそも何匹魔物が外にでたと思とるねん、誰も生きとるはずが……いや、よう考えたら最初のも含めて四回、今日だけでもこの短時間で三回も入り口埋めよったんやよな?……つまり、出てった魔物全部どうにかしたっちゅうこっちゃないか?
いやいや、いやいやいや。そんな相手、うちにどないせぇっちゅうねん!?
あれやで?うち、魔神とか名乗っとるけど、見た目どう見ても小動物やで?どっちかっちゅうたら可愛い系やで?ちゅ○たん系やで?いや、誰やねんなその子。
そんなうちが何百、何千の魔物をあっちゅうまに殺すようなバケモン相手にどないせぇっちゅうねん!!うちの得意技は『つぶらなおめめ』で見つめるだけやのに!!
……へぇ、わかっとりますがな!ちゃんと見に行きますがな!……ほんまに人使い荒い玉やな!そんなに気になるんやったら自分で見に行けっちゅうねん!
まぁ、ほっといたらわしも死んでまうかもしれんしなぁ……ここは腹くくって見に行くしかないかぁ……。
てかほんまに外出るとか何百年ぶりやろ?入り口から一歩出ただけで暑……足の裏熱っつぅ!?
なんやねんなこれ!?外、夜やのに全然涼しないやん!マジええかげんにしてほしいわ!こんなとこにいつまでもおられんわ!うちは自分の部屋に帰らせてもらうで!
……あれ?入られへん?穴ぐらの中に戻られへん!?なんで……えっ?入り口埋めよるアホを探して二度と埋めんな言うてこい?
そんなあほな!どこにおるかもわからんヤツどうやって探せっちゅうねん!死ぬ!普通に暑さで死んでまう!誰か!誰か助けて!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます