異世界への入り口

今日は12月24日。クリスマスだ。この日は大勢の人が市の中央の方へ出かけていく。僕と彼女もその一人だ。彼女と言っても付き合っている訳ではなく、たまたまお互い予定が空いていてぼっちだったのでせっかくなら会ってなんかしよう的なノリで行くことになっただけだ。中央駅に向かう電車が停まる小さな駅舎でしばらく待っていると、やってきた。

「おーやっほー。よろしく〜」

「よろしく〜」

「次の列車いつ?」

「あと5分くらい」

「おっけ」

適当に雑談しながら時間を潰す。

しばらくして、アナウンスが流れ、列車が入ってきた。イベント列車のようで、他の物とは分かりやすく塗装が違っていた。寒いのでさっさと車内に入り、ロングシートに座った。

『まもなく発車します。次の駅は、“ザラムノーツセントラル駅”です』

「え?なんて言ったんだ?」

「聞いたことない・・・」

「ザラムノーツって名前どう考えても海外だよね?」

「…… 調べてもそんな名前の街、出てこない」

「嘘でしょ?」

いつの間にかドアは閉じ、速度も上がっていた。

「とりあえず、どうしようもないしその駅に着くまで寝てよっか」

「あんた胆力ありすぎでしょ……」

「まあまあ。逆に電車の中で何をしてももう発車してるし、無駄だよ」

「それもそうか・・・」



それから何十分、いや何時間列車に揺られたかはわからないが、陽がすっかり落ちた頃、急激に速度が落ちたことで僕ら2人は起こされた。



『到着しました。“ザラムノーツセントラル駅”です。お出口は右側です』

「と、とりあえず出よっか・・・」

「だね・・・」

ドアから足を踏み出した瞬間、僕と彼女はその景色に圧倒された。

「「でっかーー!!」」



そこは、ガラスとレンガと鋼鉄の、

異世界の駅だった。

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