第6話

親愛なる真人へ


 冒頭から「ごめんなさい」の一言で始まるのもどうかと思うけれど、LINEにすぐに返事をしなくてごめんなさい。その時は体調が悪くて病院に行っていて、その後もなかなか回復せずに寝込んでいたものだから。でも、写真は布団の中で見ました。家具とか調度品(インテリア?)は、凄くバランスが取れていると思いました。真人の好きな緑にこげ茶色を基調としたテーブルや椅子、意外だったのはお皿とか小物まで色物を使っていたこと。サボテンとは別に花なんかも飾ってあって。意外と植物の良さにハマってしまったとか? 

あんなに真人がお洒落だなんて知らなかった。私も好きだな、ああいうシックな色合いで重厚な感じのスタイル。いつか私が東京に遊びに行った日には、あのカップソーサーで出されたコーヒーを飲むのかな、あのお皿でどこかの有名店のケーキでも食べるのかな、なんて思っています。あと、スーツ姿の写真を送ってくれてありがとう。随分と真人、大人っぽくなったね。(いい男になったね!)私達も大人と言える年頃ではあるから大人っぽくなったね、という言い方は失礼か。短く切りそろえた髪型が今風で垢ぬけたなぁ、なんて感じました。だって、こっちにいる頃なんて髪型にも服装にもてんで無頓着だったもん。東京って、やっぱり凄い所なんだなぁ……あの真人もこんな風に変えてしまうんだから。あなたではないけれど、私も切なさを感じます。一緒に原っぱで寝転んだり、自転車で競争したり色々やった頃が懐かしい。いつの時代の話をしているんだって感じだけれども。でも、私達物心ついた時からずっと一緒に育ってきたから、もうお互いが思い出みたいなものだよね。半身、というか。そんな真人にずっと嘘を吐いていて、隠していてごめんなさい。真人が書いてくれた質問に私も答えなくちゃいけないよね。達也君が真人のペンダントトップを見て「自分のだ!」と言ったことは真人の想像通りです。私が、前に達也君に同じようなものをプレゼントしたの。だから、達也君が自分のものだと勘違いして沢に入っていったんだと思います。もう秋もだいぶ深まって来て寒くなったね。木枯らしのビル街はさぞ寒いと思います。体調にどうぞ気を付けてください。


弥生より


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