ラブ♦︎ラビリンス(漆黒愛)

プラチナサファイア

深愛へ続く帰れない入口

 愛とはなにか……言ってみなさい。


「愛とは、思いやり……そして自己犠牲」


 ほう……自分を犠牲にしても愛する人を大切にすると……。模範的な解答で欺瞞ぎまんに満ちた言葉だな……それで彼女を言いくるめたという事か……。


欺瞞ぎまんだなんてひどい言い方だよ。数えきれない男と女がいて、その中から僕と彼女は出逢い、結ばれた。それは運命だよ。それが人の普遍的な生き方で人生さ……」


 ふふふっ……運命ですって、なんとも都合のいい戯言ざれごとを……そうやって自分を誤魔化し納得させ、見たくない真実を心の隅に追いやっているだけではないのか……。


「なにを言っているんだ……僕達は切り開いてみせるさ……ふたりの運命を。明るく希望に満ちたふたりの運命を。愛しあい、子供達に囲まれ、温かい家庭と絆を創っていくんだ……それはお金では決して得られない価値なんだ……僕達なら、できるさ」


 では、見せてもらおう……お前達の愛を。そして切り開く運命を……本当に互いをいつくしみ、許し、許される絆を結べるかを。そのめくるめく愛を私に見せてごらんなさい。それがなされた時、お前達の愛は永遠のものとなるだろう。


「あぁ、見せてやるさ……僕と彼女の愛を」


 よほど自信がおありのようで……では私をお前達の住処すみかへ連れてゆきなさい。私が愛の証人となり、ふたりの愛を、愛の世界で語り継ごうではないか。


「僕達の愛は、ゆがむ事はない……絶対に」


 ふふっ……楽しみにするとしようか……。


「ねぇ…」


「絶対に大丈夫……大丈夫だっ……」


「ねぇってば!」


「えっ……」


「んもう、さっきから目の前のゴシック人形をじっと見つめて黙り込んで……わたしの話聞いてた?」


「ごめんごめん……それよりさ、僕達結婚して間もないけど、新居がちょっと殺風景じゃないか?……インテリアのアクセントとしてこの人形飾ってもいいかな」


「う〜ん、ちょっと気味悪いけど、あなたがどうしてもって言うなら……まっいいか」


「それじゃ、行こうか……」




 見える……見えるわ、お前達の心のどす黒さが。男は女の背後にある莫大な遺産を……女はお前では快楽を与えられない疼く躰を、別の男達に委ねている事を……。


 さぁ、ふたりの真実が暴かれた時、お前達は貫けるのか……愛を。


 私にすべて見せなさい……愛という道化芝居をね……ふふふっ……。




 お買い上げ、ありがとうございました。


     ***********


 あ〜っ、あのゴシック女、最近戻ってきたと思ったらまたすぐお持ち帰りされて……ったく相変わらずエグいやり口だなぁ。


 まぁ、愛……とりわけ偽りの愛がゴシック女のだから……ワタシも人の事は言えないけれど。負けてられないわね、ワタシも。


 あらっ、目の前におあつらえのいい男……。




「そこのあなた……愛ってなぁに……?」


     ***********


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