第17話 白状しろよ!

 アルスが少量の荷物を持ってこの屋敷に来る際も俺は護衛に加わったが、特に大丈夫だった。


 ドタ恋は第四回目のお茶会が一番のクライマックスなのだ。ここで五回目が成功するか否かが決まるからだ。


 このままだとハクトは誰にも近寄られず、誰とも婚約できずに終わるだろう。それに逆上して闇の宝玉を使うかもしれない。あれは最終手段に取っておくだろうから。


 今は俺の部屋でアルスとお茶をしている。

 ハクトの話をしながら次のお茶会が波乱になりそうだと話している。


 この日から次のお茶会までの間、アルスを連れてレベリングに回る日々を過ごすのであった。

 四回目のお茶会が勝負になるかもしれない。そう思い、できる限りのレベリングを行った。


 あれからは特に襲撃もなく過ごしていた。いよいよ明日が四回目のお茶会になると言う時、事件は起きた。


 ────ガタンッ


 椅子から転げ落ちたのはアルスであった。


「アルス! どうした!?」


 喉を抑えながら嗚咽をしている。顔色が悪い。この体の反応は毒だ。


「毒なら。スロウ」


 アルスの体内のスピードを遅くする。そうする事で毒の回りを遅くするのだ。


「誰か毒消しを!」


「はい!」


 メイドが走っていくのが見えた。視線の先に冷静な目をしている者がいたことに、この時は気が付かなかった。


 毒消し薬を飲ませると少し顔色が良くなった。アルスの部屋に運びベッドに寝かせる。


 ベッドの手前の椅子に座って考える。

 これは何者かの手によって行われた毒殺の計画だろう。なぜ俺ではなくアルスを狙ったのかは分からない。


 いや、わかるか。エマとマーニーに手を出したからか? そもそも誰が毒を入れた? ん? さっき視線の端に誰かが突っ立っていたような。


 記憶を遡って思い出してみる。そして、思い当たった人物をメイド長に何処から雇ったかを聞く。それで分かったことと俺が屋敷でダークサーチを行った襲撃時のことを思い出した。


「そういう事かよ。俺は騙されていたわけだ。くそっ! はぁ。絶対白状させる」


 そうして第四回の社交会が始まった。


 俺は馬車からアルスと降りると一緒に歩いていく。俺は周りを観察する。すると、ハクトが目を見張ってこちらを見ていることが分かった。


 そうだ。お前は確定なんだよ。ただな、狙いはお前じゃない。


「オルト様、本当にあの方が一連の騒ぎを?」


「あぁ。間違いない」


 エマ様とマーニー様が寄ってきてくれた。


「オルト様、大丈夫だったんですね!」


「あぁ。俺たちは大丈夫だ」


「アルス様も無事でよかったです!」


「はははっ。なんとかね」


 四人で少し談笑していると王子様がやってきた。

 俺は王子の動きに注視する。

 入口からこちらに歩いてくると目の前にいた俺を見てまた悲しそうな顔をする。だが、隣にいたアルスを見た瞬間、目を見張った。


「なっ!? なぜアルスがいる!」


「王子。アルスがなぜ、いないと思っていたのですか?」


「あっ、いや……」


 アタフタと取り繕っているレオン王子。それはもう挙動不審にも程があるくらいだ。


「報告が上がったからですか? ウチのサリアから?」


「なっ! なんのことかな……」


「サリアは二年前に王子様付きを外されて行き場がないといって頼まれて拾ってあげたとうちのメイド長が言ってました」


「そうだろ? 外したんだから、そいつは俺とは関係ない」


 逃げ切れると思ったのだろうか。スンッとして自分はしらばっくれる気なのだろう。


「俺が、アルスは死んだと伝えたのはサリアだけなんですよ。家で毒殺しようとしたのが間違いでしたね」


「さぁ。なんの事だか」


「前回の時、盗人が入ったって俺にいいましたよね? 俺、ものを盗まれたなんて誰にも言ってないんですよ。なんで知ってるんですか? 盗まれたの?」


「それは、何者かが入ったと言うからだな」


「えぇ。みんなに心配されましたよ。襲われて大変だったねぇと。だれも盗人なんて言いませんでしたよ?」


「そもそも、なんで俺がそんなことを……」


「邪魔だからですよね? ハクトと俺が邪魔だから始末しようとしてるんでしょ? それなら辻褄が合う。コーザとダクアは万が一戦った時に負けるかもしれないから殺した。そうでしょ?」


「俺は殺してない」


「あなたの飼ってる暗殺部隊が殺したんだろ?」


「何だってそんなことをする必要がある? 俺は王子だぞ?」


「だからだよ。人は圧倒的な力を急に手に入れると気持ちが大きくなる。裏ルートと言うのは実際のドタ恋にはない。あんたがこの世界で手にした暗殺部隊を使った強行策をそう呼んでいるだけだ!」

 

 そろそろ逃げれなくなってきたかな? 苛立ちが顔に見え始めてきた。


「はぁ。うるせえなぁ。知らねぇったら知らねぇんだよ。不敬罪で処刑するぞ?」


 急にそう口にした王子様に周りの人達は困惑し始めた。


「あんたが全部やったんだろ!? 白状しろよ!」


「ハクトがやってんだよ! なぁ? ハクト!?」


「そうだ! 俺は強いぞ!」


「やれ!」


 王子様は俺を指さしてハクトに指示を出す。


 ハクトは剣を抜き去った。


 俺は体に魔力を漲らせた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る