第14話 プレゼントショッピング

 襲撃を受けてしまったことで修理が必要になった。

 今、屋敷には扉やら壁やらを修復する業者が屋敷内を行き交っている。

 数日たったが、あれ以来襲撃はない。


 主要人物でも始末したのだろうか。

 よくわからないが、俺の忠告は守っているようだ。


 今日はレベリングを休んで買い物に行こうと思っている。

 前回の社交会でエマ様はオシャレに気を使っていると言っていた。

 となればプレゼントしたくなるというもの。

 マーニ―にもプレゼントをお持ちしよう。


 少し胸を躍らせて屋敷を出た。

 それから街中のアクセサリーショップに行く。


「これはオルト様。なにかお探しでしょうか?」


 さっそく金ヅルが来たと思ったのか店主がこちらに向かって笑顔で歩いて来た。


「あぁ。ちょっとアクセサリーをな」


「それでしたら、こちらなんでどうですか? 宝石がふんだんに使われているネックレスになります! どうですか? 煌びやかでしょう?」


 そう言って進めてきたネックレスは首に回る部分はもちろん、胸元には大きなダイヤがある。

 その周りにはダイヤを盛り立てるように小さなダイヤが散りばめられていて非常に煌びやかだ。

 だが、俺の趣味ではない。


「あぁ。ちょっと他も見てくるわ」


「是非、またのご来店をお待ちしております!」


 凄く元気のいい見送りだった。

 背中に何かの念を感じながらも俺はその店を出て違う店を目指した。

 さっきのは貴族ご用達のお店だった。


 次はリーズナブルな店に行ってみようと思う。

 案外そのような店の方が気に入るものを見つけることができるかもしれない。

 念の為戦闘用の格好で来たのは正解だったかもしれない。

 これであればその辺の冒険者と同じように見えるだろう。

 俺のことも知らないだろうし。


「これは! オルト様じゃないですか!? このような庶民の店にありがとうございます!」


 知られていたらしい。

 一応公爵家だが、別段何をしたわけでもないのに何で知っているんだろうか。


「なんでも、初めて婚約する宣言をご令嬢の目の前でされたとか!? では、ご令嬢へのプレゼントでしょうか!?」


「んーそうなんだ。少し見せて貰ってもいいだろうか?」


「勿論で御座います! お好きに見てください!」


 売り物として飾られている物はシルバーの指輪が下げられているネックレスや羽根の形をしたもの。

 髪留めはシンプルなシルバーのバレッタや木製のさすタイプもある。

 いろいろなアクセサリーを見て回り、悩んでいた。


「ちょっと他をみてまた来るかもしれない」


 そう言い残して店を出た。店主は悲しそうな眼をしていたが、別に悪かったわけではない。

 逆に凄くよかった物があった。しかし、なにかこうピンとくるものがなかったのだ。


 何かないかと店を歩いていると路地の方に店があるのが見えた。

 不思議に思って窓から中を見ると骨董品屋のようだ。

 中に入ってみるとカウンターの暗がりに老婆が佇んでいた。


「すまないが、少し見せてもらってもいいだろうか?」


「ふぉっふぉっふぉっ。何を断る事がある? ここは店じゃ。勝手に見るがよい」


「あぁ。それもそうだな」


 その老婆を訝しみながら店へと入って陳列してあるものを見る。

 そこには昔の魔道具が置いてあった。

 実は屋敷で俺が使用している通信魔道具は昔の骨董品なのだ。


 大魔道具時代という時代が過去にあり、魔法が今より使われていなかった時代があったそうだ。

 そういう設定だったことを思い出した。

 魔法が個人で使用できるようになったのは最近で、詠唱や短縮詠唱が開発されてから魔道具は衰退していったそうだ。


 別に衰退することもないと思うのだが、魔石を使わなきゃいけないことがネックだったようだ。

 某異世界物の小説の様に魔物に魔石が入っていれば反映したんだろうが、この世界の魔石は魔力が溜まった所にできるもの。

 鉱物と同じように発掘したり偶然森の中に落ちていたりと日常的に手に入るわけではなかったようなのだ。


 視線を奪われた髪留めがあった。透明な魔石が付いている黄金色の髪留めがあった。

 それは異様に俺の心を鷲掴みにして離さなかった。


「これが欲しいのだが、このついているものはなんなのだろうか?」


「おぉ。これかい。これはな、ヒヒイロカネという魔力伝導率の高い金属に魔石を付けてあるのさ」


「この魔石は使い物になるのか?」


「この魔石はのぉ。魔力を充填したものの魔力色に染まるのよ。そして、その込めたものが魔力を繋げれば装備している者を守ってくれるのじゃ」


 マジマジとその髪留めを見る。

 そんなことがありえるんだろうかと疑問に思って見ていると、老婆が口を吊り上げて言った。


「ふふっ。発動するかが心配なら一度試してみるといいじゃろう。一度込めたら一度しか使えんからな」


「なるほどな。そうしよう感謝する」


 そういうとお会計を済ませる。貴族用のアクセサリショップよりいいお値段になってしまった。

 だが、背に腹は代えられない。

 これでエマ様が守れるなら俺は財産など投げ捨てる。


 布袋から髪留めを取り出して魔力を込めてみる。

 すると魔石は綺麗な紫色になった。

 これならあの髪にも似合うかもしれない。


 良い買い物ができた為、非常に気分が高揚していた。

 こんな楽しい日はここしばらくなかった。

 良い日になった。


 あっ。マーニーの買ってないや。まぁいいか。

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