12話。

 ダンジョンの入り口を設置してから幾らか日が経った。


 その間に一度だけ現地人と思われる六人ほどがダンジョンの中へとやって来た。一体どのような行動を取るのだろう。私の知らない魔法を扱うのだろうか、どれだけの強者なのだろうか、正直に見た目はただの一般村人だったが何かしら変わった術を扱うのだろうか、などと滅茶苦茶に期待していたのだが、全くの期待外れだった。


 ダンジョンの中に入ってすぐに現れる三つの分かれ道。少しの間彼らは話し合い、二人ずつに分かれて進むことに決めたようだ。


 まず左の道。この先に待ち受ける最初の罠は古戦場跡で生成した剣を再利用した落とし穴。落ちた先にはぼろいとは言え剣が敷き詰められているため、当然生身の人間が落ちればひとたまりもない。のだが、一人が落とし穴を踏み抜き、もう一人がそれを助けようと腕を掴んだものの、落ちていく勢いを支えきれずそのまま仲良く落とし穴に飲まれていった。


 次に右の道。ここは道の至る所に設置してあるスイッチとなる箇所に触れたり、踏んだりすると標的に対して矢が飛んでくるのが最初の罠になる。飛んでくる方向はスイッチの正面、スイッチの反対、上下など不規則に定めている上に所狭しと設置しているため仮に初見で対応出来ても舐めていると引っかかる地味だが効くものだ。この罠のいいところは矢の部分を剣でも酸でも飛翔物なら何でも発射できるので、相手によって内容を変えることも可能な点である。ひとまずお試しで最初はただの矢にしていたのだが……注意深く壁や床に罠がないかゆっくりと手で触れて調べながら進んでいた男が壁のスイッチに触れ、音もなく頭を射抜かれる。それに気付いたもう一人が腰を抜かしてへたり込んだところにスイッチがあり、二人目も逝った。


 最後に真ん中の道。この道は最初は罠はない代わりに、少し進んだところで後方に壁が生成され退路が断たれ、そこに前方から骸骨騎士スケルトン・ナイトが一班三体で現れるという強制戦闘イベントにしてみた。調査隊らしき二人組は突然現れた骸骨騎士スケルトン・ナイトに最初は酷く狼狽した様子であったが、逃げ道もないため覚悟を決めたのか最後には骸骨騎士スケルトン・ナイトに果敢に挑み、散っていった。二人を討ち取った骸骨騎士スケルトン・ナイト達は、怯みはしたが決死の覚悟で飛び込んでいった二人に胸に手を当て、敬意を表していた。どうやら私が呼び出した骸骨スケルトンには武人の心が宿っているらしい。


 結論から言うと、本当にただの村人だった。死霊術を研究していた私でも流石に何の罪もない人間を実験に扱ったり、無理矢理働かせたりと搾取するような真似はしてこなかったのでなんだか申し訳ない。更にダンジョンの特性なのかダンジョンで死亡した人間は死体と魂ごとどこか知らない場所にある収納空間に格納されるらしく、魂もとなると流石にむごいと思い、せめて魂だけは解放してやった。輪廻転生はあまり信じていないが……私のダンジョンの初の犠牲となった彼らに、もし今の私のように次の人生があるのなら幸多からんことを願っている。そして無駄にしないためにも死体はしっかり有効活用させて貰おう。次の階層は屍人グール系にしようと思っているからね。


 それからは侵入者もなく、特にやることもないため日々骸骨スケルトンを生み出し、オリゴスに鍛えさせながら第一階層の改良を行っていた。ちなみにあれから毎日新たに骸骨スケルトンを生み出してはオリゴスに訓練をさせているが、骸骨騎士スケルトン・ナイトへの進化はなく、骸骨戦士スケルトン・ウォリアーへと進化できたのは一握りだけだった。あれは運が良かっただけなのだろうか?


 そんな疑問を抱え、悩みを解消するためにも日々検証や訓練を続けていたある日のこと。明らかに村人とは異なる、場慣れした雰囲気を持った冒険者四人がダンジョンへと現れたのだった。



────────


今日は筆が乗ったので二話目の更新です。

ちなみに冒険者の名前は決まってません。どうしよう。

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