2話。

 次に目が覚めたのはどれくらい時間が経った頃だろうか。意識を失う前と特に変わったところはない白い部屋で少し重くなった身体を起こす。


 先ほどの知識の濁流を受けて、ひとまず自分が今何をしなければならないのかは理解した。かなりざっくりと言えば、「ダンジョンを開拓、運営せよ」だ。


 まず今私がいる部屋はダンジョンの主である私だけが来ることができる部屋。所謂緊急時の避難場所である。この部屋にはダンジョンのコアが置かれており、外部からの侵入者がダンジョン内部を攻略し終えるとここに到達し、コアを破壊することで踏破完了となるらしい。……え?おそらくコアと思しき水晶、私の身体に組み込まれたけど?しかしこれはこれで好都合、私という存在が破壊されない限りコアも破壊されないのと同義なのだから。仮にダンジョンを攻略されても私さえ生きていればいつでも再起を図れるという最高の状態だ。


 次にダンジョンの階層について。ダンジョンというのは幾つかの階層を積み重ねていくことで出来ているらしい。ダンジョン毎に全ての階層が異なる属性や異なる種族、地形と様々な組み合わせで成り立っている、というが……。


「私がここに降り立つからには……ここは不死アンデッドのみの楽園とする!」


 そう、私は死霊術士ネクロマンサー。死霊術の知識を活用せずして何が死霊術士ネクロマンサーか。


 もちろん階層毎に工夫は凝らすつもりだ、もしお客様が来るようであれば決して飽きが来ることなく、骨の髄まで死霊術の素晴らしさを味わって貰えるように丁重におもてなしをしなければなるまい。


「まずは……開始オープン、からの階層作成フロア・クリエイト、だったか?」


 ダンジョンを作成するにあたって、目の前にダンジョン運営に必要な画面を映す命令オーダー、その次に手始めに基礎の基礎となる第一階層を作る命令オーダーを唱える。ダンジョンに関する行動は基本的にコアを通して命令オーダーを唱えることで完了するらしい。なので本来はあの白い部屋に籠り、ダンジョンを作成していくらしいのだが私は今コアと文字通り一心同体。ふよふよと浮きながらいつでもどこでも好きに命令オーダーを唱えることができるのだ。


 命令オーダーを唱え終わると、ごごご…。という地響きの後に白い部屋にすうっと扉が現れた。この扉の先が第一階層なのだろう。では早速向かうとしよう……我が新しい迷宮研究畑へ!





 扉は近付けば勝手に開いてくれた。手も足もない身体でどうやって扉の先に進むのか不安だったが、杞憂だったようだ。白い部屋を抜けた先、そこには……何もない、土壁、土の床に囲まれたただの空間があった。今のままでは当然面白味も何もない、ただの空間。しかし、それは自らの意思で好き放題弄り回せる最高の土地であることを示していた。


「おおおおおおおおおおおおお……!ここが、私の新たな始まりの場所……!はあ……はあ……ふう、いやまだ興奮するには早いな。まずは階層の広さを拡張できる範囲で拡張して……。」


 こうして私の死霊術をフル活用したダンジョンの作成が始まった。





 ────────────────


 次、魔物が出ます。

 本当は早く魔物の話に移りたいので2話の時点で出すつもりだったのですが、プロットとか事前の準備なしの弊害早速出てますね。

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