第34話 祈り祈られ

 あの頃に戻りたいなんてことは言わない。なんだか負けた気がするから。

 君と電車を待っていたホームを思い出した。自宅の最寄り駅は違ったので、高校の最寄り駅だ。玄関を出て四分の近さ、同じクラス、仲良しと来れば、私と君が一緒に帰るのに、それ以上の理由は要らない。たとえ君に、同じ駅で降りる友達が居たとしても。

 それくらいは私を優先してもらわないと困る。そう思うのは、私の心の中でだけの傲慢だ。君が時々、中学の同級生を連れ立っても、私は笑っていたと思う。

 無性に、自らの素直さが憎くなる。私は表情を取り繕うのが上手くない。むしろ下手だ。なんだかすぐに泣きたくなる。本心を曝け出そうとするだけで、体が勝手に涙を作る。私の体は役立たずだ。

 それでも君に、私の仄暗い部分はバレなかっただろう。君は私を神様みたいだと、違う友人に言ったことがあるらしい。なるほど、私は巷でこっそり信仰されているタイプの神様だったか。

 だから、戻りたいとは言わない。神様はきっと、願わない。

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