第33話 パブロフの犬未満

 誕生日を筆頭に、大事な日には君を思い出す。

 君の誕生日ケーキを君と一緒に買いに行きたいし、君の誕生日プレゼントを考えたい。君はプレゼントのセンスが壊滅的で、ニュートンの揺り篭(球が五つくらい並んでいてカチカチ鳴るやつ)を手渡してきた時はさすがに引いた。いや私、文系なんだが??

 ニュートンの揺り篭は君の気まぐれさの賜物だし、私とて物質的なものに拘るつもりは無い。こう言っては何だが、君が私の誕生日に時間や思考を裂いてくれたことが嬉しかった。パブロフの犬もびっくりの安い報酬である。

 と、ここまで言ったことの半分くらいは嘘である。というか、しょっぱなの文章が普通に妄言だ。

 何しろ私は、君を考えることに、今更理由なんて必要無い。誕生日とか大切な日とか、そんなのは死ぬほどどうでもいい。

 私は、ただいつも君の隣に居たかった。

 君の顔を横から見つめていたかった。

 思い出したくなんか無い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る