第11話 莉子のお願い

「颯太くんの顔が見たいなぁ。なんかないの?」

莉子と2人で映画を見た後、併設するショッピングモールを用もなくぶらぶらしていると、莉子がそんなことを言い出した。

「高一の時の写真なら…」

「そんな昔のじゃなくて、今の。撮ってないの?」

「撮る理由がないし。」

「えーっ。どしても顔が見たい!」


どうしても見たい、と言われても…


「じゃあ、なんか試合とかないの?バスケの。」

「ああ…今だとウィンターカップやってるかも。」

「夏なのになんでウィンターなの?」

「ウィンターカップに出場するための地区予選だよ。ウィンターカップ自体は冬にある。」

「それ見に行こう!」

「本気で言ってる?」

「うん。暇だし。ね?いつ試合あるか調べて、ほら。」


莉子に言われて予選の日程を調べる。

皐月高校は男女とも1回戦は勝ち残っていて、次は2回戦だった。

「次の土曜日あるみたい。」

「じゃあ、それ見に行くよ!優衣だって、颯太くんの試合見たことないんでしょ?」

「でも、颯太が出るとは限らないよ。」

「それは優衣が聞いといてよ。決まりね。」


莉子に押し切られた形だったけれど、わたしも見たい。

颯太はどんなプレーをするんだろうか。


莉子が紐綴じのノートが必要だと言うので、文房具を扱っているお店に寄って、その日は別れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る