第5話
...どのくらい父さんが出ていってから時間が経っただろうか...
「もう我慢できない!私見てくる!」
「やめなさい!一葉!隆二さんが駄目だと言ったの!貴女が行っても意味ないわよ!」
「兄ちゃん!どうにかしてよ!」
「優太...父さんがな...来るなと言ったんだ。僕がどう行っても意味がない。むしろ不利になるだろう。じいちゃんなら別かもしんないけど」
「じゃあ!じいちゃんを!」
「無理だ。じいちゃんは遠い所にいる...」
くっそ...俺も行きたいよ...でも!俺には行けるだけの力がない、悔しいよ...
「翔海...行きたいのね?」
「母さん..でも!「でもじゃない!翔海ならお爺さんの所で修行もしてる!後悔したくないなら行け!どうせ隆二さんが負けたら世界は終わるんだから!」
「分かったよ!母さん!行くよ!」
「行ってらっしゃい。あとこれ持っていきなさい!隆二さんのお爺さんにいざというとき使いな!って言われてた日本刀よ!鞘に入れて隠して持っていきなさい!警察にバレるんじゃないよ!」
「ありがとう!母さん!俺...行ってくるよ!」
僕は背中に刀を下げ父さんの後を追った...
. . .どこ行った?こんな時は前と同じように枯れ葉を辿れば...此方の道を左に...此方の道を右に...よしよし、こっちだな...
ガキィ!キン!バキッ!
音が聞こえてきた!右か...
「グァ!やってくれたな!魔王!」
「余に葬られるのだ...勇者よ...ほら、早く立て今楽にしてやろう...」
「父さん!」
「翔海!?なんでここに!来るなと!くそっ!言った!筈だろ!」
父さんは魔王の剣を受けながら叫んだ。
そんなこと...分かってるよ...
僕は持ってきた刀を抜く。
でも、家族を守るって決めて剣術も学んできたんだ。
だから....
「新手か...貧弱だな...一太刀で終わらせてやる。」
さぁこい!ってはや...
ガキィ!
「ッチ!勇者が!」
「翔海!おりゃ!」
「父さん...!」
父さんが敵を吹き飛ばし、俺に何か渡した。
なんだ...?これは...錠剤...?
「翔海、それは30分間身体能力を上げてくれる薬だ。父さんが魔力使えない時に使ってたやつだ...一錠しかない...この死ぬかもしれない闘いを父さんとやりたいなら飲め!!」
ゴクッ!
そんなの一つに決まってるだろ!
父さんとこの魔王を倒す!
俺も大事な家族を守りたいんだ!
指をくわえて見ているわけには行かない!
「飲んだか...翔海の気持ちは分かった。だったら~ほいっ!」
俺の刀が蒼白く光る。
「身体能力を上げたからといって魔法が使える訳じゃない。その刀を魔法が斬れるように魔法を使った...さしずめ魔法k...いや、妖刀といったところかな~」
そうだ。
いくら身体能力を上げても相手は魔法が使える。
俺は相手と同じステージにすら立っていなかったんだ。
父さんには感謝だな...これで恐らく飛んでくる魔法には対処できる。
「さ~て、翔海一緒に逆転するか!」
「父さん負けてたのかよ!最強ってのはどこ行ったんだよ!」
「良いじゃないか~これから勝つんだから~」
「父さん...やろう!」
「僕達が勝つよ~魔王~」
「下らない家族愛だな...」
そう言い終わると同時に魔王が俺の方に突っ込んできた。
とうさ...いや、一人でも大丈夫。
身体能力は上がってる。
剣は化け物のじいちゃんの剣を受けてきた。自信を持て!俺!
カキンッ!
受けた!このまま受け流して...父さんの追撃を待つ!
「雑魚が...甘い!」
ッチ!バックステップして火の玉を打ってきたか!だけどこの剣なら...3、2、1ここだ!
行け!父さん!
「甘いのはお前だよ~魔王~!」
「むっ!」
「片腕貰った~」
父さん!魔王の片腕を落とした!
これで魔王の力は半分に...って何やってるんだ?あいつ
...落とされた腕を持って...腕に押し当てた?そんなことしてもくっつく筈ないだろ。
「腕を落とされたのは久方ぶりだな...だが余には通じぬ...」
落とした筈の腕がくっついた!?
何だあれ...魔法の力か...?
父さんも驚愕の表情を浮かべている。
父さんも知らないとなると父さんのいた王国にはない魔法なんだろう。
「知らない魔法とでも思ったか?勇者も使っているただの回復魔法だ。魔力はかなり消耗するがな...時空を歪めたのに知らなかったのか?」
知らなかったんだね...父さん...でも多分消費する魔力が多すぎて父さんのいた所では発見されていなかったんだろう...多分...
「腕を斬られたのは少し油断していた...これからは少し本気で行かせて貰う」
またしても俺の方へ!同じ軌道なら読めるんだよ!
「同じだと思ったか?愚か者」
両横につらら!?不味い!避けられない!
「翔海!前に集中しろ!」
父さんがつららを魔法で打ち消してくれた。
ありがとう!父さん!これで受け流せる!
「...問題なのはやはり勇者の方か」
今度はあいつ父さんの方に...
あんな化け物父さん一人で闘ってたとはなでも俺はいつもより何倍も速く動ける!
これなら隙を見て後ろからやれる!
. . .父さんを斬るために大振りになった!今だ!
「ッチ!二人というのは厄介だな...」
バレてる!?いや、でもここまで来たら斬るしかない!
「待て!翔海!斬るんじゃない!退け!」
父さんがそう言うなら...チャンスだったのに...
その直後俺が立っていた場所に無数の氷のつららが降ってきた。
これ...止まらなかったら俺これに...ささっt...
「やはり厄介だな...勇者は...こいつは今ので刺し殺したと思ったのだが...」
あれ?これ、死ぬ?死ぬのか...
急にさっきまで自分の中にあった熱が急速に冷めるような気がした。
それと同時に薬で得た万能感も...
い...嫌だ!死にたくない!
「翔海!動け!あいつ!死の恐怖に囚われやがった!」
あ...魔王の剣が前に...
「間に合え!翔海!」
もう避けられない、もう剣も差し込めない。ははっ詰みだ。
ザシュ!
... ... ... 衝撃も痛みも来ない。恐る恐る目を開けると父さんが...父さんが前に立ち塞がっていた。
「父さん!その剣!か...貫通して!」
「こんなもんかすり傷だ!翔海!お前は一体何しに来たんだ!死にたくない恐怖に囚われるんじゃねぇ!ここで俺達が負けたら家族はどうなる!俺達は死んでもここでこいつも止めないといけねぇ!分かったか!」
「父さん!...分かったよ!」
自分の心が弱いせいで父さんに大怪我を...いや、切り替えていこう。
まず、魔王を父さんなら離さないと!
「離れろ!魔王!」
「むっ!勇者よ...今の回復で随分と魔力を消費したようだが大丈夫か?」
「問題ないよ~翔海は死の恐怖をこんなに早く乗り越えた...逆転するのはここからだよ~」
魔王の言うとおり今の回復で父さんの魔力はかなり消耗してしまっただろう。
此方の世界に来てからあまり魔力になるものなんかなかったからだ。
これからは俺が頑張らないと...じいちゃんの教えを思い出せ!こっから逆転だ!
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