願ったいつだってずっと、君と風を切って未だ見ぬ世界を目指したいよ

書き出しの、「『ぱぁん』と間延びしたピストルの音が聞こえる」が凄く良い。
本作では、すべてのはじまりを象徴する音でもあり、物語のはじまりとしてもこれほどふさわしい書き出しはないだろう。

群像劇。

十秒足らずのレースの中に、それぞれの選手たちの悲喜こもごもが描かれている。
現実には、百メートル走でランナーズハイは起きない。
けれども、五年前に起きた滑山高校での拳銃殺傷事件をきっかけに人生がどう変わったのかを回想で語りながらの疾走することで、それを可能に感じさせくれる。