お兄ちゃんとデート

 ――ガタンゴトン、ガタンゴトン。


 俺は弟をまんまと家から連れ出すと、そのあと地下鉄の電車に乗って、ヒーローショーを観に某デパートへと向かった。


 さすが休日なだけに、車内も遠出に出かける人達で賑やかだった。俺は吊り革に掴まりながら立っていた。だが、友葵は空いてる席に座らずに何故か立ったまんまだった。そして、モゾモゾと身体を揺らして顔を俯かせた。


「んー? どうした友葵。『座らない』のか?」


「ううっ、優希お兄ちゃんのバカ!」


「え? 何が?」


「ひっく、これじゃ、座りたくても座れないよぉ……!」


 友葵は泣きべそをかきながら顔を真っ赤にした。それもそのはず。俺は出かける時に、弟にチャッカリ悪戯を施した。


 友葵のお尻に小さなローターを入れた。しかも奥に入れたので、その振動はさぞかし堪らないに違いない。友葵は今、その振動に身体を捩らせながら必死に耐えていた。


「ううっ、お兄ちゃんのバカ……! お出かけするのに僕おかしくなっちゃうよぉ」


「へぇー。何がどんな風に?」


 俺は友葵の前で椅子に座ると、立ったままの弟をニコニコしながら眺めた。そして、ポケットに入れたローターのスイッチを弱から強にした。


『ひゃうっ!』


 いきなり声を出すと、友葵は自分の口を手で押さえて周りを気にした。


 ああ、可愛いな友葵。


 俺の羞恥プレイに必死に耐えちゃって。


 そうだよな~。


 電車内じゃ、変な声だせないもんなー。


 しかも人目を気にして可愛いな。

 ああ、なんて意地らしい弟よ。


 そう言って染み染み思いながら、もう1段階強めに振動を上げた。


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