屋上で。
「め、目薬で本当に……?」
「お前おれを疑ってるのか? その目薬は俺が作った特製の目薬だ。効かねーわけがないだろ? マタタビを嗅いだ猫がどうなるか、お前も知っているだろ。原理はそれと同じさ。その目薬さえあれば女はイチコロだ。どうだ気に入ったか?」
彼はそう話すと、悪の顔でニヤリと笑った。
「あとは壁ドンを使え、壁ドンで落ちない女はいない。壁+口説きの文句で女を落とせ!」
優希の心の揺さぶりは、彼にダイレクトに衝撃を与えた。
「か、壁ドン……? そ、それって……??」
「男が女を壁際に追い詰めて、片手で口説き文句を言うシチュエーションのことだ。大概はそれで落ちる。女の憧れは何だ?憧れの王子様にお姫様抱っこされることや、カッコいい男に壁ドンで迫られることや、手と手が触れあう甘いシチュエーションだ。お前がみせてやれ、憧れの美紀ちゃんに。女の子の憧れのシチュエーションってやつをな――。コードネームは壁ドンだ! 壁ドンを使って美紀ちゃんを口説き落とすんだ!」
「もっ、もし……! もし壁ドンでも俺が美紀ちゃんを落とせなかったら??」
そう言って自身無さげに優希に話した。すると彼はポケットからタバコを取り出すと、屋上のフェンス越しでタバコを一服吸ってから話を切り出した。
「んー、そうだなぁ。そん時は俺がアンタの前で美紀ちゃんの肩を抱いて"美紀"って呼んでるかも知れないぜ――?」
優希はポケットに両手を突っ込むと、背中を向けて彼の前でカッコつけた。その空を仰ぐ姿は、どこか自身に満ち溢れていた。彼その話しに克己の心に男のスイッチが入った。
「美紀ちゃんを呼び捨てにするな……! 美紀ちゃんは俺の女にするんだ!?美紀ちゃんは誰にも渡さねーからなッ!!」
克己はそう言って優希にライバル心を燃やした。すると、彼は鼻で笑いながら嘲笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます