屋上で。

「おっ、お願いします…――! それだけはやめて下さい!」


「何を?」


「そっ、その……。美紀ちゃんの縦笛を勝手に吹いていたことをばらすのはやめて下さい…――!」


「どうしようかな~?」


 足下に泣きながらすがりつく克己を優希は真上から見下ろしながら嘲笑った。


「そりゃそーだよな。マドンナの美紀ちゃんの縦笛をお前は勝手に吹いたんだ。そりゃ、ばらされたくないよなぁ?」


「うううっ……」


 優希は彼のネクタイを掴むと、ワル顔でさらにゆさぶりをかけた。精神的なゆさぶりは、彼の心を激しく追い詰めた。これが10代の持つ光と影の二面性なのか? 優希はその悪と善。陰と陽を上手く使い分けていた。


 美紀ちゃんの縦笛を吹いていたことをばらされたくなかったらお前は黙ってろ。優希はそう言って彼を脅して口封じをした。克己はブルブルと恐怖に震えながら、鼻水を垂らしながら地面に三つ指揃えながら頭を下げた。


『い、言いません……! 今さっき聞いたことは何も聞きませんでした! だっ、だからそれだけはやめて下さい…――!』



「フッ――。」 



 その瞬間、克己は完全に彼に落ちた。優希はワル顔でニヤリと笑った。


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