神官ミリアは神の言うことしか聞きません 16

 ミリアの眠る客室から出た俺は『ミラー』の効果をといた。


 ミリアの養父の姿から、モトキとしての姿に戻る。


「終わったのかい?」

 ラーニャはカウンターにグラスを用意して待っていてくれた。


「まあ、終わった。これでミリアは養父の幻影から解放されたはず。コンバートするだろうよ」


「そうかい、なら乾杯だ。うちの教会秘伝のカクテルを入れてやろうじゃないか」


「普通、教会には秘伝のカクテルとかないんだけどな……いやいいけど」

 カウンターに座り、ラーニャのカクテルを飲む。


「それにしてもモトキ、あんたなかなか悪いことするじゃないか。亡き父の姿で娘を諭すとか、並の神経じゃできないよ」

 

「たしかにミリアには悪いことしたかもな。まあでも、ミリアの養父の姿を好きに使うことに関しては罪悪感はない。――ミリアの養父の神官さんな、転生者だ。地球からきたやつ」


 ミリアが保管していた養父の遺品の中には、地球の学生服と生徒手帳があった。

 

 ミリアの養父は、俺より前にこの世界に連れてこられた転生者だったのだ。


「へえ……?」

 ラーニャは興味深そうに眉をひそめた。


「相手が転生者なら、たとえ死者でも容赦はしないってだけの話だ」


 しかしなにを考えてミリアの養父は神官になったのか――若い頃にチートスキルで好き放題やったのを悔いていたのだろうか? 


 あと、どうして娘を育てようと思ったのだろう?


 気になることはいくつかあったが――考えても仕方のないことなので、考えないことにした。


**


「準備はいいかい、ミリアちゃん?」

 ラーニャは静かな声で問う。


「は、はい……」

 カウンターに座るミリアは、震える声で答えた。


「お姉さん頑張って。僕がついてるから!」

 相変わらず子供に化けている俺は、力強くそう言ってミリアの手を握った。


 ミリアもすがるように、俺の小さな手を握り返してくる。


 ――これからコンバートの儀式が開始されるのだ。


 朝、客室から起き出してきたミリアは、ラーニャに深々と頭を下げて言った。

『どうか私をユーヴァ教団の一員にして下さい。ラーニャさんと一緒にこの教会で人生を送りたいんです』


 ラーニャはもちろん快く応じ、早速コンバートの儀式の準備を整えた。


「それじゃあミリアちゃん、まず胸部を出しな」


「は、はい!」


 ミリアは身につけている神官服の胸元をハサミで切り、自身の胸をラーニャに向けて恥ずかしげもなく露出した。

 弾力のある二つの峰がプルルッと顔を出した。


 ラーニャは自身の指をインクにつけ、ミリアの双丘の間に――つまり心臓部に――なにやら仰々しい文字を記していく。


 なにをやっているのかはさっぱりわからなかったが、俺としてはミリアの胸が見れるので何でもよかった。


 ミリア最近胸大きくなったなあ、などと俺は心の中で思う。

 俺に対する母性に体が反応したのだろう。

 いい傾向である。


 今後は女性ホルモンがたくさん出るような行為を俺とすることになるので、さらに大きくなるだろう。


 などと、考えていると――


「あうっ……!」 

 途端、ミリアの心臓部から銀色の光が放たれた。


 銀光はうずを巻くようにして天井へと舞い上がり――消滅した。


「へえ……」

 おそらくあれが、今までミリアを守護していた女神クィーラの力なのだろう。

 

 ミリアを運命にしばりつけていた鎖――それが今、消滅したのだ。


「お姉さん、大丈夫?」


「ええ、大丈夫よ子羊さん……でも……今はしばらくそばにいてくれる……? なんだか心細いの……」


 ミリアの胸には、今度は金色こんじきの光が宿っていた。


 女神ユーヴァの守護が宿った証拠だ。


 コンバート、完了である。


**


 さて、晴れて女神クィーラの鎖から解き放たれたミリアがどうなったのかというと――


「子羊さん……私から離れちゃいやよ。ずっとここにいてね……」

 お気に入りのぬいぐるみみたいに、俺をぎゅっと抱きしめるミリア。


 もう、4時間以上もこうしている。


「お姉さん……僕ちょっとトイレに」


「いやっ! 私の上に漏らしてもいいから今は離れないで!」


「…………」

 さすがの俺にも、その趣味はなかった。


 女神クィーラの守護の力を体から出してから、ミリアはめちゃくちゃ甘えん坊になった。

 

 心細くて仕方がないのだろう。

 これまでの人生、ずっと心の中にあり続けた女神の力が消えたのだから。


「子羊さんもラーニャさんも離れちゃいやよ……?」


 俺を胸に抱き、終始ラーニャにつきまとうミリア。


「やれやれ……困った子だね」

 ラーニャも仕事がしにくそうで、困り顔であった。



 そうして、ついに夜がやってきた。


 待ちに待ったお楽しみの時間である。


 ミリアの膝の上で夕食を食べ終えた俺は、万を辞して言う。


「ねえねえお姉さんたち、三人でお風呂に入ろうよ!」


 昨日確認していおいたのだが、ユーヴァ教団のこの教会には、風呂があるのだ。


 浴槽こそ革製ではあるが、構造はジャパニーズ風呂に近い。


 こんなん、一緒に入るしかなかろうが。


 俺の提案に、ラーニャはぎょっと驚き顔を浮かべる。

「……おいおい坊や、あんたなに言って――」


「まあ! とってもいい考えね! 家族でお風呂だなんて私初めてよ。わあー、素敵だわ……!」


 ミリアは乗り気であった。


 みんなで一緒にお風呂で温まる――今、超心細いミリアにとっては魅力的にすぎる提案である。


「ま、待ちなよミリアちゃん……アタシはいいよ……二人で入ってきな……」


「ラーニャさん……一緒に入ってくれないんですか……? 私のこと、嫌い、ですか……?」


「うっ……いや、そんなことは……」


 妹分のミリアに涙目で迫られ、ラーニャは陥落した。


 にぃっ、と俺は口端を上げる。


 計画通り。


**


 そうして、三人でお風呂である。 


 この後に及んでラーニャはタオルを巻いていたが――ミリアの方はもう俺に対して羞恥心とかはないようだった。

 まあ、こんだけ一緒にいればな。


 小さいタオルすら持たないミリア。

 金髪を位置の高いポニーテールにしてまとめているので、色っぽいうなじまではっきり見える。


 乳も、へそも、そして乙女が見せてはいけないところも、全部見える。


 ミリアは俺を膝の上に乗せ、頭をわしゃわしゃと洗ってくれた。


「子羊さーん、どこかかゆいところはございませんか~?」


「うん大丈夫。お姉さん、今度は顔も洗ってー」


「はいはぁーい! 子羊さんは甘えん坊さんねえ。あらあら、ほっぺがこってますね~♪」


 ……ああ、いい。


 別に俺は向こうの世界でマザコンだったわけではないのだが、ミリアのこの圧倒的母性はくせになる。


「お姉さんありがとう。ねえ、今度は僕がお姉さんたちの背中洗ってあげる! 二人とも背中向けて並んで?」


「まぁ! じゃあお願いしようかしら」

 

 ミリアは俺を信用しきっているようで、あっさりと俺に背中を向けた。


「…………」

 反面、ラーニャはタオルを巻いたまま疑いの眼を俺に向けてくる


 あんたなにする気だい……? とでも言いたげである。


 ったく往生際が悪い。


 俺は有無をいわさず、二人に背中を向けて並んでもらう。


「…………」

 俺は二人の背中をじっと見比べる。


 ラーニャの褐色の肌、ミリアの純白の肌――最高の対比であった。


 隣り合わせることで互いの良さが際立つ。

 

 ミリアの侵しがたい神聖さ、ラーニャの香り立つ大人の色香。


 俺はラーニャに会った瞬間に、絶対ミリアとセットでものにしようと決めていたのだ。


「……さて」


 俺はトロルが唯一使える魔法『身体強化』を発動――背中を向ける二人にかけた。


 そうして、ミリアとラーニャの触覚をできる限り高める。


 二人は魔法をかけられた事に気づいていないようだが、今彼女たちは超高感度状態。


 俺がちょんっと触るだけで――。


「――――」


「…………ッ!!」


 効果は抜群だ。

 声にならない声を上げながら、背すじをピンっと伸ばし、目を見開く二人。

 

 一瞬で理性は蒸発し、準備万端状態に入る。


 後ろにふらりと倒れてきた二人を受け止め、そっと風呂場に横たえる。


 一糸まとわぬ超絶美人の女が二人。

 大事な部位を一切隠すことなく、風呂場の床に横たわってる。


 ふたりとも呼気が荒く、おっぱいが激しく上下している。


 目はとろんと充血していた。


 この光景を目に焼き付けておく。


 ……長かった、ここにたどり着くまで本当に長かった!



 俺はここまでの道程を思い浮かべ、そして始めた。


 そうして、俺たちは朝まで休むことなく風呂場でした。

 

 泥のように一心同体――いや三身同体になった。


 ちなみにミリアだけでなく、ラーニャまで初めてだった。



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