第50話 時間です

「光、おはようさん」


「ちゃんと眠れましたか?」


「もしかして楽しみやったか?」


「俺らも初全国なんで緊張して」


 部員の言葉に少し安心した。

 でも中には嫌悪交じりの視線も感じた。この人が全国の舞台に立つために舞台のサポートメンバーが減らされた。そう思う部員もいて当然だ。



「みんなごめん。故障した人間が特別扱いをしてもらってこの場に立ったせいで誰かが落ちたと思う。なんも言えないわ。学校に行ってまた謝るわ」


「光、安心しろ。ちゃんとビデオ通話」


 ゲラゲラと笑う部員と嫌悪交じりの視線が少し柔らかくなった。


 色々、本心だったものを隠しながら、僕は少しの罪悪感と共に彼らと直接の談笑だんしょうをした。ネタはつきないが、時間は来た。


 彼らは楽器の搬入に向かった。

 後ろ姿をただ見守ることしか出来なかった。


 あっという間に音出しになり、監督から僕に最終確認があった。一人つけるから、舞台の真ん中から思う存分客席を見てくれと。

 

 運営の係が告げた。


 時間です。

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