第49話 作り出された特別功労者
すごすごと建物の方へ戻った。像の前で記念撮影をするグループもいたが、誰かにお願いする気力も無かった。
タイミング良く雨が降ってきた。建物の中で人だかりを作っている人、サインを求められている人。僕は関係なさそうなので、通り過ぎて家族の元に向かった。
「雨に降られたか思ったわ」
「なんとかギリギリセーフ」
「もうすぐ来るって」
もう十時半だった。
「早ない?」
「渋滞するかもせんから、早く出たって」
「こんにちは今日はありがとうございます」
監督が椅子までやってきた。母は笑顔だが姉の顔は少し怒っている。
「それで今回のサポートメンバーですが、椅子は運営の方が楽器はうちの部員が出します」
「だったら光は?」
「指揮台の真ん中から、客席を見てもらいます」
「そんなん何の役にも」
「そうですね。立ちません、でも私たちにとって特別功労者なのでそれくらいは」
「あなたがたが作り出した特別功労者ですけどね」
姉の言葉はとげまみれだ。
「本当にその節は申し訳ございませんでした」
深々と
「では光君。こちらへ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます