第40話 告白

「その先輩の怪我についてなんすけど」


「知っているから言わなくていい」

 二日間でコンテを叩き込んだ。上からも見ていたので、どこのタイミングで誰がいたかというのは分かっている。


 変更点はカンパニーフロントの前だけで、並んだ以降は一緒だ。



 右隣は松山だった。



「責任を取ってですね。退学を」


「なんでだ」


「その映像残るし、みんな買うでしょ。ブルーレイ」

 初めての全国大会銅賞、関心も高まり購入者も増えるだろう。


「先生が気づいて会社にカットをお願いしたみたいなんですけど、なんか一番の見せ所だから消せないって」

 どうにも出来ない。


 そのうち映像はみんな見て、もしかしたら僕の姿を見てよろけたところが出るかもしれない、映像化しないのも遺恨を残すだろう。


「偶然、今日の当番が私で、待ってて良かったな」


「楽器は続けるのか」


「もうあんなに震えて持てません。楽器は嫌いじゃなかったのにな」

 何かを必死でこらえていた。


 それを暴く権利はない。


「みんなに会えたって自慢しときますね。じゃ、入院生活ファイトです」

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