第37話 辞めてもいいよ

「吹奏楽辞めてもいいよ」

 姉はらしくも無いことを言った。


 その真実は五分後、主治医がやってきてから明らかになった。

 搬送時に足は骨がぐちゃぐちゃだった。


 なんとか金属を入れて手術をしたが、少なくとも半年は松葉杖、高校卒業するくらいまでは木の杖を使わないといけない。


 もちろん重いものは椅子に座っても持てないし、長時間松葉杖無しで歩くことも出来ない。部活動は無理だろうという判断だった。リハビリもしながらオンライン授業で勉強をするという案も提示された。


「ごめんね、無理強いして」

 個室なので心配もないのだが姉が病室に入って来しな小さくつぶやいた。


「いいよ。そのことより結果は?」


「初出場にして堂々の銅賞」

 堂々に銅をかけているのか。


「八神高校吹奏楽部部長の大江智仁さんは取材に対し、一番の功労者でみんなをしっかり見ていたリーダーがここにはいないのでお答え出来ないです。だってさ」


「そんな素晴らしい功労者こうろうしゃはどこの誰かね」


「退部するなら今だよ。今なら一番きれいに辞めることが出来る。学校だって変わってもいいわ。母さんも納得する。考えておいて」

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