第21話 ラッキー

「全治三ヶ月ですね」


 病院で家族と共にそう告げられ、がっくりと項垂うなだれたふりをした。隣をのぞき見ると母は泣いていた。


「せっかくここまで来てたのに、あの子が落ちてなかったら」

「母さん、落ちたことは誰のせいでもないよ! アイツもわざとじゃないねんからさ」


 よしよし、ええぞ。この調子や母さんを慰めながら、後ろの姉に目をやった。

 冷たい目をしていた。これバレとるぞ。


「ま、光もここでマーチングメンバーはあきらめて勉強するやろうから、見守ってあげよ」


「そうね、歩けないと意味ないもんね」

 ま、まぁ。良しとしよう。勉強は辛いがマーチングしないことを優先とするならいい。


 学校に帰ると明らかに雰囲気が悪い。

 当然か、もうすぐ復帰をするメンバーを壊したのだ。

 これは致し方ない。バスドラムの彼は足をひねっただけで済んだらしい。

 

 これは彼のケアをすることで株も上がるし、楽器は吹かなくて済むし、マーチングのせずに済む。好都合だ。



「棚西は?」

 件のバスドラムの彼だ。


「謹慎っす。光さんを潰したんで」


 練習終わりのミーティングで話したいことがあると、手を挙げた。杖を使って指揮台に上るのは大変だった。


「馬鹿野郎!」

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