第11話 内緒の話

「先輩、一緒に全国行きましょ」


 この言葉が重圧になっている。いや、この言葉だけでは無く、周りの『完治したら当然大会に参加するよね』が重い。


 二年も中盤、他の部活に行くほど人間関係に悩んでいるわけでは無い。新しいところに行って再度吹奏楽部とは違うところで関係を構築するのが面倒だった。


 そういう惰性でここまで来てしまった。一年生の頃に明日はやめてやる、明日はと思っていた。


 あのタイミングでやめていれば、良かった。喘息は治って欲しくない。出来ればこのままがいい。


「光は喘息だから、守ってやらないと」

 それくらいの期待度がちょうどいい。


 ここで楽器を吹かねばならない事態になったら、大きな士気になるだろう。


 ここで正直に『楽器を吹きたくない』と、言うと士気は下がって上位大会に出ずに済むだろうか。


 僕は全国なんて行きたくない。

 関西も行きたくないし、いつも通り大阪府大会で落ちてほしい。


 なんと大阪府大会を突破してしまった。

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