第3話 名物先生と握手したい

 何も部活動だけをしているわけではない。


 お金がたくさんあって、楽器が潤沢で、時間がたくさんある学校では無いので、勉学はしっかり厳しい。


 指定校推薦だって最難関だし、音大への伝手つても無い。みんな実力で勝ち取る。


 別に遠征が多い学校を悪く言うつもりはない。むしろ羨ましい。

 シビアなので三年生たちは昼休みに勉強し、課題を次々とこなしている。部活動をしながら大したものだが、来年あのようになるのは少し憂鬱ゆううつにもなる。


「光。今度の府大会やねんけど、舞台配置いってくれんか?」


「セッティングですよね」


「せや。何人かコロナになってな。メンバーにはまだ出てないけどな」


「それやったら、僕より補欠に行かせた方が」


「隔離してるから、監督さんは大丈夫いうとる。皮算用かわざんようくらい役に立たんけどな。監督さんそう言ってはるから、頼んだで」

 坂下先生は僕の背中を叩いて講師室を出て行った。


 舞台に立てるのか。大阪府大会ということはOT高校やOG高校、Y高校にM高校が見る事の出来るチャンス。先生と握手出来るかな。

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