その5 有翼人。
その日はやって来た。
宿の掃除、準備、最終確認を2人で指差し点検した。
チェックイン予定時刻は、午後5時半。
1泊のお客さんだ。
時刻通りに来るとは限らない。
ルールも守られるとは限らない。
明日、ちゃんと退去してくれるとも限らない。
しかしそれらの不安を払拭するやり取りは、事前に出来ている、はず。
ビジネスは何事も信頼関係が大切、だよね!!
イケ:「ねえ、はるか、私はお客さんとどう接したらいいかな?」
新井:「今までどうしてたの?」
イケ:「とにかく丁寧にしてた。」
新井:「じゃあ、それでいいと思うよ。それがイケちゃんなんだし。」
イケ:「何か気を付ける事あるかな?」
新井:「カチッとしたホテルじゃないからさ。人と人、失礼の無いようにしてればいいと思うよ。」
そうは言ったものの、人見知りの私も実は緊張している。
第一声だけ、普段より1オクターブぐらい高い音が出たりしないだろうか。
イケ:「落ち着かないから、もう1回掃除するよ。」
新井:「私も、玄関前を箒で掃いとくわ。」
到着予定時刻まで、まだ1時間以上もあるというのに、緊張しまくり夫婦は、何かしていないと落ち着かないのだ。
と、その時...
バサッ!バサッ!
羽音がした。
その音の方を見上げると、羽の生えた人が降りて来た。
新井:「うわっ!」
ビックリして、声を出してしまった。
翼人:「入り口、チェック、許可、OKでした。」
顔から夥しい汗を滴らせながら、有翼人はそう言った。
池本家は、召喚士の家柄だ。
敷地一帯を今給黎さんが覆っているけれど、その入り口には門があり、警備員が常駐している。
そのチェックを通った事を、この人は伝えている。
まあこの点も、宿としては良いのか悪いのか微妙な所なんだけどね。
ってか、門を通った後、歩かずに飛んで来たのか。
翼人:「ずっと、飛んだ。疲れ、ヤバい。げふっ!げふっ!」
なんか咳込んだ。
えぇ...そんな疲れているなら、なんでゲートチェックの後また飛んだのか?
新井:「あの、どのような用でこちらに来られましたか?」
翼人:「今日、予約、山内です。」
新井:「あ、え、山内さんですか!」
イケ:「とりあえず水をどうぞ。」
建物からスーッとイケちゃんが出て来て、山内さんに水の入ったコップを渡した。
いつ気付いたんだ?
その水を山内さんが飲み干して、落ち着いたところでフロントに案内し、チェックイン手続きをする。
その時、私には心配な事が1つあった。
山内さんが有翼人だというのは、知らなかった。
色々と不便で困る事が発生しそうだ。
特に...アレは...どうしたものか...。
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