第5話 許せないところ第1位! それは車軸!!

 今回は車軸についてだ。前回ホイールの話をしたので、一緒に語ろうかと思ったんだけどさ。

 ここだけは長くなりそうだから、一話まるごと使うよ。

 ちなみに、この話は現役のクロスバイク乗りにとっても楽しく、マニアックな内容になると思う。マジで構造が特殊なんだ。

 多分これも、2022年からの変更点だね。まったく余計な事してくれたよ。

 このエスケープR3 2022年モデルの中で、間違いなく僕が一番嫌いな部分だ。ちなみに2番目は前回語った通り、タイヤである。


 クロスバイクの車軸は、結構いろんなタイプが採用されている。車体やメーカーによってさまざまだ。

 例えば、一番安いやつだと『ナット締め』が使われている。ママチャリなどと同じ六角ナットで止まっているタイプで、スパナを使って外す。スポーツバイクに使われるのは稀だな。

 クロスバイクに最も使われているのは、『クイックリリース(以下、QRと呼称)』だね。工具が要らないのでメンテナンス性が高い。手を使ってレバーを倒すだけで、簡単にホイールを外せるぜ。

 最近だと、ちまちま広がっているのが『スルーアクスル』ってやつ。六角形の穴が開いたボルトが使われていて、アーレンキーっていう六角柱の道具を使って外す。QRと違って、いちいち軸を抜き切らないとホイールが外れない。緩めるだけじゃだめだ。

 ちなみに、手間のかかるスルーアクスルだけど、頑丈さなら最も優れてるんだぜ。なので油圧式ブレーキの台頭とともに広がってきた。強力なブレーキには、それに耐えられる強力な車軸が必要になるって事だね。


 さて、エスケープはどうなのかというと……

 長年にわたって、エスケープR3にはQRが採用されてきた。メンテナンス性を上げるためだね。レバーひとつの手軽さは僕も大好き。

 ちなみに、「そんな車軸の外しやすさなんて、どこで必要になるの?」って思った人もいるだろう。よく聞いてくれたね。

 例えば自動車に乗せる時、分解しないと乗らない場合がある。特に2022モデル以降、エスケープってちょっと大きくなってるんだ。具体的にはホイールベースが長くなったので、前後に大きくなってる。

 電車に乗せる時も、輪行バッグっていうやつに入れる必要がある。この時も分解しないといけないね。

 もちろん、タイヤがパンクしたときも分解が必要だ。お店の人に頼みっぱなしなら気にしなくていいんだけど、僕は自分でやっちゃうタイプだからさ。旅先でパンクして、近くに自転車屋が無いなんてことも多いし。


 だからこそ……かつてのエスケープに採用されていた『QR』が好きだったんだが、

 2022モデルから、『ボルトオンスキュア』ってやつに変更されてしまった。


 説明しよう。ボルトオンスキュアとは、だいたいQRと同じ構造のくせに、レバーが無いタイプである。そのせいでいちいちアーレンキーという工具を持ち出さないと、ホイールが外せない。

 つまり、QRの弱点である『固定力の弱さ』と、スルーアクスルの弱点である『整備の面倒くささ』を両立させた、いいとこ取りならぬ悪いとこ取りの構造だ。

 誰だよこんなアホなシステムを採用したの!?


 ……いや、一応フォローも入れておくと、QRはその手軽さから、『泥棒にホイールだけ盗まれる』って問題点もあったんだ。

 前回「僕のロードバイクには11万円するホイールを使っている」って話をしたと思うんだが、あれはただの自慢ではない。「それがもし盗まれたら……」という話の伏線だ。

 盗品もメルカリなんかで売れば足がつかないし、物によっては充分な金になる。なので自転車泥棒がホイールだけ外して盗む事件は後を絶たない。

 そんな時、工具がないと外せない構造にしておけば、泥棒も盗みにくいってわけだ。

 もっとも、その必要な工具は100円ショップで手に入るし、エスケープの純正ホイールなんか盗んだところで、中古で数千円にしかならん。わざわざ盗む奴もいないと思うが。


 まあ、防犯って意味なら鍵をかけておくのが一番だ。ホイールとフレームをちゃんと纏めてロックするんだぞ。たまにホイールだけ駐輪所の柱にロックして、それ以外を分解して盗まれた話を聞くことがある。

 そうならないように鍵は大事なんだが、車軸の構造で防犯とかは意味が分からん。QRに戻してくれ。




 ……というわけで、僕はQRに改造しました。

 いやー、これも偶然、ロードバイクの部品で使ってないQRが家に余ってたんでね。前輪はそれで乗り切った。

 問題は後輪なんだが、そっちはエスケープ純正のスタンド(別売り 3500円ほど)に付属するQRを使った。ロードバイク用はちょっと長さが足りないんだ。

 エスケープのリアエンド幅(後輪の軸の長さ)は、マウンテンバイクと同じ135ミリメートル。ロードバイクって130ミリメートルだからさ。5ミリ足りないとネジがしっかり締まらない。ここ、ポイントな。

 このとき買ったスタンドも、また新たな問題を発生させるのだが、それは次回にでも語ろう。


 さて、エスケープ2022モデルの前輪なんだが、ちょっと特殊な構造がもうひとつある。

 普通のフロントエンド(車軸の軸受け。フレーム側)は、じつはネジ穴が穴ではない。

 丸い穴が開いているわけじゃなく、コの字型の切込みがあって、そこに軸を通してレバーで締め込む方式が一般的だ。スルーアクスルは例外だけどな。

 で、切り欠きがあるおかげで、軸を完全に抜かなくても、少し緩めるだけでホイールを外せるんだが……

 この車体は、外側に金属板がネジ止めされていて、その金属板のせいで車軸を完全に外さないといけない構造になっている。じつに面倒くさい。

 これも防犯のためだと言われているが、実際はどうなんだか?

 まあ、邪魔なので外せばいいだけである。メーカーは推奨していないようだが、この板を外せば普通の車体と同じように使える。

 これでようやく、昔のエスケープみたいに、楽に整備ができるぜ。

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