机の上

@minori04mio03

『机の上』

私は学校が嫌いになった。

それでも何とか通っている。

そして、私は平凡な毎日を送ることさえも耐え難いほど苦痛になってきた。


だが、がんばって学校には通っていた。


「おはよう。玲奈」

席に着いた私(玲奈)に原あかりが声をかけた。

「おはよ、玲奈」

と、佐々木奈美も隣からこちらを向いてつぶやいた。

「うん、おはよう。あかり、奈美」

と、私も返した。

「玲奈なら今日提出のレポートやってきたよね?」

と、あかりが言うとすぐに

「そりゃそうだよ、玲奈だもん」

と、奈美が追いかけた。

「もちろん」

「奈美は夜遅くまでゲームしてたの?」

と、私は続けて聞いた。

「あったりー!よく分かったね」

と、奈美は私ではなくあかりの方を向いてそう言った。


いつからか会話中に私の言葉を返してくれない時がある。話しかけても無視をしてくることもあるのに、挨拶はしてくれる。


慌てた様子でレポートを書き始めた奈美、本を読みながら時折奈美を見て笑っているあかり。

私はこの二人が大好きだった。

そしてこのクラスにもう一人大好きな人がいた。

神崎れんという容姿もかっこよくて性格も評判の人気者だ。

彼が楽しそうに話す姿と笑顔が大好きだった。


そんなことを考えていると彼が話しかけてきた。

「七瀬(玲奈)、おはよう」

「おはよう、神崎君」

「明日さ、前に話したCD屋に行こうな」

私はとても嬉しくなった。

「うん!行こう!」

私が喜んで即答すると彼はニコッと笑うと行ってしまった。

すると、奈美とあかりが

「明日・・・ね。楽しんでおいで」

「玲奈は緊張しすぎないといいけど」

2人は悲しそうな笑顔をこちらに向けながらそう言った。


翌日、私は教室の時計が壊れて止まったままであることに気が付いた。

「あかり、奈美、おはよう」

二人とも、沈んだ様子の顔で私を凝視したまま言葉さえ返してくれない。

「おはよう、ってば。何で何も言わないの・・・?」

私から喋りかけるとなぜ無視するんだろうか。

挨拶を返さずに教室を出てゆく彼女たちの背中に向かって、

「私が何をしたっていうの・・・?」

そう問いかけながら目から溢れそうな涙を抑えた。

神崎君が近くに来て何も話さず私を見つめた。

「・・・」

「・・・神崎君?おはよう」

「・・・」

神崎君まで・・・。

どうしてみんなは私が喋りかけると返してくれないのか。考えても思い当たる節がない。

私は黙り込む神崎君に泣きそうになりながらもまた声をかけようとした瞬間__

「・・・れん、今日は早退して遊びにでも行こうぜ。机を見てたってしょうがないだろ」

「そうだぜ。今日は学校にいても苦しいだけだろ」

男子たちが神崎君にそう言った。

「でも・・・。じゃあ放課後に、新しい花を買いに行こうぜ」

神崎君は泣きそうで、でも笑顔で男子たちにそう返した。


その日はみんな、私が喋りかけても無視をした。

次の日も、その次の日も・・・


私は何がどうしてこうなってしまったのか分からないまま、決心した。

もうたくさんだ。今日で学校を最後にしよう。

そう決めた放課後。私は教室の机を見た。

いつから置かれていたのか?私の机の上には大好きなガーベラの花が花瓶に一本挿されていた。


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