昼下がりの空港のロビーで

ninjin

昼下がりの空港のロビーで


 昼下がりの 空港のロビーで


 君が僕のチケット 握りしめたまま



 伏し目がちな君と 瞳合わす度に


 僕は作り笑いで 言葉にならない




 銀色の 冷たい飛行機が


 屋上のフェンス越しに やけに切ない



 手を伸ばし駆け出した 子どもたちの叫び声が


 翼を震わす鳴えこえに かき消されていく




 気付かなかった 僕のせいだね


 君の涙の その理由わけは・・・


    ◇


 『愛してる』 おざなりの言葉で


 煙草に火を点ける指の 震えが止まらない



 傾き始めた太陽 斜めに差し込む光で


 眩しさを言い訳にして 目を逸らしてしまう




 小さくて 壊れそうな君の手を


 強く握り締めると 砕けるのが怖かった



 ゲートへ導くアナウンス 踏み出せずにいる僕に


 言葉に迷う君のこと 僕にも分かるよ




 『気付かなかった』 なんて嘘だね


 僕の想いの その理由わけは・・・


    ◇


 振り返り 駆けだした


 チケットを 投げ出した


 君を強く 抱きしめた


 強く強く 抱きしめた


    ◇


 ――愛してる


 もう二度と 嘘なんて吐かない



            おしまい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

昼下がりの空港のロビーで ninjin @airumika

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説