第7話 運命の試食会

「受付リストで確認して。席にご案内する時は、くれぐれも間違えないように」

「そろそろお迎えの時間よ。車から降りてきた方をこちらに」


 手配や受付の様子見で飛び回っていたあかねは、軽く息を弾ませていた。人手が足りないわけではないが、やはり細々したところは自分が見た方が納得がいく。


 会場の様子を見回っていた西園寺さいおんじも同じ気持ちのようで、皿の配置や花の選び方など、テーブルのセットに細かく気を配り忙しそうだ。


 今日のテーマは「春」。ストレートすぎる気もしたが、あえて奇をてらわない直球で勝負してみることにした。テーブルの上には桃色や橙色を基調とした花が並び、黄緑色の食器が若葉のように彩りを添えている。


「お客様が到着されました」


 声がかかって茜は振り向く。まずやってきた客人は、茜にとって親しい人だった。


「具合はどうかね、茜さん」


 声をかけてきたのは武藤むとうだった。彼は相変わらず品の良いグレーのスーツに身を包み、疲労感を全く感じさせない佇まいだ。今週もヨーロッパと日本を往復してきたようには、とても見えない。


「約束は忘れていないからね。茜さんのお手並み拝見といこう」

「ありがとうございます。こちらもできるだけの改良はさせていただきますので、何なりとおっしゃってください」


 武藤に頭を下げ終わった茜は、武藤の後ろにいる二人に目をやった。一人はヨーロッパ系とおぼしき金髪と白肌を持った中年女性で、もう一人はドレッドヘアーの若い黒人男性だ。


「武藤さん、こちらの方々は?」

「ああ、紹介するよ。この女性はアウローラ・ロッシ、イタリア人だ。彼女はもともと日本で食べ歩きもしている親日家だ。今日のことを話したら、是非来たいというのでね」

「よろしくお願いします」


 アウローラは下手な日本人よりきれいなお辞儀をした。日本通というのは嘘ではなさそうだ、と茜は思う。


「こっちの男性はテイラー・ジョンソン。彼はアメリカ人で、若者に人気のインフルエンサーというやつだ。ただ、最近自分のSNSの更新ネタに困っているようだったから誘ったんだよ。彼がお菓子の写真を撮っても構わないかな?」

「ええ、是非」

「ありがとう。ミスター武藤は食通だからね、今日は楽しみだよ」


 茜はテイラーと握手をし、武藤たちを席に案内した。


「茜さん、こんにちは」


 続いて挨拶に来たのは一橋ひとつばしだった。彼の手にある黒い傘を見て、茜は微笑む。


「持ってきてくださったんですね。わざわざありがとうございます」

「この傘のおかげで助かったからね、ありがとうはこっちの台詞だよ。……前回のデートは役に立ったかな」

「デートではありませんが、大いに。周りの方々はご存じありませんので、食べ終わるまで内密に願いますね」


 茜はくすくすと笑った。そこへ途中から、低い声がなぜか混じってくる。その声を聞いて、一橋がはっとした顔になった。


「……傘を借りた。ほう。傘をねえ。ずいぶんと我が妹に親切にしてもらったようだが、なぜ一緒にいたのかな?」


 般若の形相の陸斗りくとがそこにいた。仕事の話をした西園寺が誘わざるをえなかったので、今日は彼も出席しているのだ。


「こ、これには理由があってだな。待て陸斗、頼むから話を聞いてくれ」


 答えに窮し奥へ連れて行かれようとする一橋を見て、茜はため息をついた。今こそ、陸斗に灸をすえる時だと判断する。


「お兄様。今日は私の晴れ舞台です。そこにお招きした大事なお客様に、下手な手出しは断じて無用。よろしいですね?」

「しかし、茜……」

「よ・ろ・し・いですね?」


 茜がこれ以上ないほど睨みをきかせると、ようやく陸斗は背を丸めて引き下がった。一橋が安堵の息を吐くのを見て、傍らにいた武藤が笑う。


「頼もしくなったねえ、茜さん。陸斗くんがあんなに怯えるなんて、珍しい」

「……ありがとうございます。一橋さん、席はこちらに」


 なんとか苦笑いし案内を済ませ、茜は周囲を見渡す。


「あと、ご挨拶は……」

「おや、神月こうづきのお嬢様じゃないですか。お招きいただきありがとうございます」


 茜は楽しそうに歩いてくる男を見やった。一風変わった男だから来るかは分からないと思っていたが、やはり金の匂いをかぎつけて飛んできたか。茜は胸の中に生じた苦いものを飲みこんで、男に近付く。


「水沢様。参加いただきありがとうございます。良い紹介記事を書いてくださると期待しておりますわ」


 茜が笑いかけると、彼──水沢章みずさわ あきらはこれ見よがしに腕組みをした。


「それはどうかなあ。あっちもこっちも面識ある有名人だらけ。僕はお菓子より面白いネタがないかと思って……」

「最近はマスゴミという単語があるそうですよ。一体どういう意味でしょうね?」


 あてこすりに気付いて水沢は苦笑した。


「嫌だなあ。僕にだって取り得はありますよ」


 その言葉は嘘ではない。彼は有名雑誌を渡り歩くベテランライターで、編集長にも多数の伝手を持つ。これで性格が良ければ言うことはないのだが、残念ながら彼にあるのは記者特有のハイエナ根性だけである。


「ええ、分かっていますよ。ただ、あまり増長しないようにと思っただけ」


 取材はさせるが放置するつもりはないことを、茜は言外に伝える。水沢は肩をすくめてさっさと立ち去ろうとした。


「とりあえず、そのポケットにあるICレコーダーとスマートフォンはこちらでお預かりします。撮影した写真も最後に全てチェックしますので、ご了承を」


 その背中に向かって、茜は譲歩することなくとどめを刺す。


「そ、それはあんまりじゃ……」

「カメラがあるのに、撮影にどんな不都合が?」


 みなぎっていた水沢のやる気が、みるみるしぼんでいった。去り際に「血も涙もない女め」と聞こえた気がしたが、茜はその程度のこと気にしない。その後も次々と客を案内し、席を埋めていった。


 茜がぐるっと会場を一周すると、満席になっていた。それを見て取って、キッチンから二人の男性が出てくる。一人は神月家のシェフの高峯たかみね。そしてもう一人は、ここのオーナーである藤波ふじなみだ。藤波はまだ三十代と若く、引き締まった体つきのモデルのような男性である。


「皆様、お集まりいただきありがとうございます。ここまで規模の大きなパーティーを行うことができて、今日は誠に光栄な日ですね」


 藤波の興奮が、離れたところにいる茜にも伝わってくる。高峯も、子供のようにわくわくした顔をしていた。


「それでは、卓に本日の逸品をお持ちしましょう。どれも仕込みに時間をかけた、自慢のお菓子です。どうぞお楽しみください」


 藤波が手をたたくと、スタッフがお菓子と茶を乗せたカートを運んできた。客からわっと歓声があがる。さすがに有名人だらけなのであからさまに群がるようなことはしなかったが、人々の視線はカートに釘付けになっていた。


 チョコレートやフルーツを貼ったケーキ、摘んできた花をそのまま小さくしたような飴菓子、そしてマカロンやジャムを挟んだクッキー。……その横に、茜たちが仕込んだ和菓子がある。


「皆様、遠慮無くどうぞ。もちろんお茶もたっぷりございますので、おかわりは遠慮無くお申し付けください」


 高峯と藤波が、客のカップに茶を注いでいく。その音を聞いて、客たちは動き出した。


 まず当たり障りのないケーキやマカロンが真っ先になくなる。そして客は、茜たちが用意した和菓子も躊躇なくつまみ始める。


 和菓子を食べた客の何人かが首をわずかに傾けるのが見えて、茜はテーブルの下で密かに拳を握った。


 そしてとうとう、その中の一人が手をあげた。


「聞いてもいいかね? この菓子、洋菓子にしては変わった味がするんだが……材料は何かな。決してマズくはないんだけどね」


 カートを運んでいた高峯が足を止める。そして質問してきた、小太りの外国人男性に向き直った。


「それは、ブランデーと苺をあわせて作った羊羹ですよ。下の方に甘味を抑えた餡が入っていますが、苺の色で若干見えにくくなっていますね」

「羊羹!? これが!」


 首をかしげていた男は、今度は目を見開いた。


「前に食べた時は、甘くて食べられたものじゃないと思っていたが……いや、全く分からなかったよ」

「こうやってずらっと並んでいることに、何か意味があるの?」


 同じテーブルの黒人女性が、高峯に重ねて質問した。


「はい。花筏をイメージしまして」

「ハナイカダ?」

「花が散って、水面に花びらが浮かんでいる様子をそう言うんです。その名前がついた和菓子は、こういう風に並べて筏のようにして楽しむんですよ」

「本物もこれとそっくりなのかしら」

「本来の花筏は餅を使った菓子ですので、見た目は全く異なりますね。日本では花といえば桜のイメージが強く、本物の花筏には表面に桜の焼き印が押してあります。今回は、筏に見立てて並べるというところだけ真似させてもらいました」


 楽しそうに会話がはずみ、今度は違うテーブルからも手があがった。


「じゃあ、この薄いグリーンの葡萄も和菓子なの? これもラム以外に変わった香りがするから、気になっていたのよ」

「はい、ご名答。こちらは白餡にラム酒を混ぜ込み、それをまとめて練り切りにしたものですね。原案だと紫の葡萄だったのですが、全体的な色合いを考えてマスカットの形にさせていただきました」


 そう言って高峯はさらに続ける。


「ちなみに皆さんがゼリーだと思って召し上がっていた、マンゴー風味とベリー風味のお菓子も、和菓子の応用なんですよ。これは寒天と砂糖を固めた、錦玉羹というお菓子がもとになっています」


 客たちは説明を聞いて盛り上がる。しかし茜は、一人の老紳士が眉間に深い皺を刻んでいることに気付いた。


「しかしなぜ、最初は和菓子が混じっていることを黙っていたのかな? 我々が気付かないと思って試していたのかね?」


 老紳士の問いを聞いて、室内に沈黙が満ちた。客が我が意を得たりと、少し眉をひそめる。高峯もわずかに客から目をそらし、どう答えたらいいのか考えている様子だった。


 そう、今日が和菓子入りのアフタヌーンティーと知っていたのは、客の中では武藤と一橋だけ。後の面々は、普通の洋菓子が出てくると思っていた。騙されたと言うほどではないが、多少不快な思いになるのは仕方のないことだろう。このままでは、会場が荒れるかもしれない。


「いいえ、そういうつもりではありません」


 茜が危惧を抱いたその時──西園寺がゆっくりと首を横に振りながら、マイクを握る。


「結果的に不愉快な思いをした方々には申し訳ないことをしました。しかし、和菓子にも抵抗なく食べられるものがあると、どうしても知っていただきたかったのです」


 西園寺の発言で、場の空気が引き締まる。彼の少し低くなった声は、部屋の中によく響いた。


「今までの食事で、和菓子に悪いイメージを持った方もおられるでしょう。大丈夫です、と口で言うのは簡単ですが、食べていただくのはなかなか大変です。まさかここにいらっしゃる皆様に、無理強いするわけにはいきませんし」

「確かに、僕の経験でも餡や餅が苦手という人は結構多かったからねえ」


 苦笑する西園寺を見て、武藤がここで救いの手をさしのべる。


「それならば、我慢せず自然に食べていただける物を作るしかない。今回のパーティーで試されていたのは私どもの方です。完食していただけるか、美味しいと思っていただけるか、それを確かめるための会でした。十分に説明しなかった理由は、分かっていただけたでしょうか」


 西園寺はここで言葉を切り、青い瞳で皆を見つめた。


「現状、日本の和菓子は洋菓子に比べ遥かに出遅れた位置に居ます。味の問題、国外への輸送の問題、課題は山積していますが、僕たちはそれでも洋菓子に並ぶ位置まで進みたいと考えています。今日のお菓子を食べて可能性があると思われたなら──どうか、助けてください。皆さんの力を貸して下さい。よろしくお願いします」


 深々と頭を下げる西園寺を見て、客たちが互いの意見を問うような視線を交わし合う。感慨は抱いているようだが、それをうかつに表現して良いのか迷っている様子だ。


 その膠着を切り裂いたのは、意外な人物だった。


「いや、立派立派。美味しかったですよ、お菓子。僕、お腹が空いてるので。おかわりもらえますかー? お姉さんも一緒に食べましょうよ」


 大きな声をあげているのは、着席した水沢だった。


「あ、お騒がせしました。応援してますよ、綺麗な顔のお兄さん」


 水沢の言い方と顔が面白かったのか、客がどっと沸く。わざと彼が迂闊なまねをしてみせたせいで、張り詰めていた空気が一気に弛緩した。そして西園寺に向かって、惜しみない拍手が送られる。


 さすがに敏腕記者だけあって、どう動けば人の感情が変化するのかよく心得ている。彼のおかげで、最悪の事態は回避できた。高峯が再び、菓子を運ぶために動き出す。安心したように腰を下ろした西園寺がこちらに微笑みかけるのを見て、ようやく茜も笑顔を作ることができた。



 たっぷりと飲み食いした客が楽しそうな顔で帰っていくのを見て、茜はほっと息をついた。行き届かないところはなかっただろうかと気を張っていたが、ようやくそれが少しゆるむ。


 見送りに出ていた茜と西園寺に、武藤たち三人が近付いてきた。


「大変だったね、茜さん」


 茜の苦労を悟ったように、武藤は苦笑いをしている。茜も笑みを返した。


「武藤さんのおかげでなんとかなりました。テイラーさん、アウローラさん、お菓子はいかがでしたか?」

「最初は和菓子と気付かずに食べたんだけど、フルーツの風味がして実に美味しかったよ。僕はこの葡萄が一番だったかな。プロジェクト、応援してるよ」

「ありがとうございます」

「といっても、SNSの投稿以外に何ができるのか分からないけどね。僕は和菓子の業界は疎いから。じゃ、頑張って」


 あくまであっけらかんと軽く言って、テイラーは帰りのタクシーに乗り込んでいった。まあ、最初の反応としてはこんなものだろうと茜は思う。


 対してアウローラが冷静かつ重々しい様子な方が気になった。何か言いたいことがあるのに、切り出すタイミングに困っている感じだ。


「ちょっと僕は席を外すよ。車、呼んでおくから」


 自分が知らない方がいいと判断した武藤が離れる。茜は意を決して、アウローラに話しかけてみた。


「すみません、何か気になったことがあれば、おっしゃっていただければ。本当のところをお聞きしたいのです」


 茜が言うと、アウローラがようやく声を発した。


「いえ、一つお詫びしなければならないことがありまして。本当は百貨店の和菓子バイヤーである友人が来るはずだったのですが、どうしても重要な仕事があって抜けられなくて」

「それは仕方がありません。詫びてもらう必要は全くございませんよ」

「詫びとはそういうことではなく……実は私、友人から密かに任されていたことがあるのです。今度、彼女とヨーロッパの大使が対談する予定がありまして。そこに出す和菓子候補を探して欲しいと言われていました」


 アウローラは、つかえが取れたように一気に言い放つ。


 その大使の名前を聞いて、茜は驚いた。公務だけでなく私生活もSNSに細かく投稿することで有名な人で、気さくな人柄もあって好感度と注目度が高い。若者人気の高そうなテイラーとはまた違って、多くの客層にアピールできるに違いなかった。


「……大使のことは存じ上げております」

「私は、今日のお菓子はとても良かったと思います。後からこんなことを切り出して失礼なのですが、今度の対談で使わせていただいてもよろしいでしょうか」


 茜たちに拒む理由などあるはずがない。武藤に買ってもらうことばかり考えていたが、今日の成果として十分すぎるほどのおまけがついてきた。


「ぜひ、お願いします!」


 西園寺が真っ先に言う。


「では、詳しい連絡をさしあげるまで、一切他言無用でお願いいたします。漏れると、大使にもご迷惑がかかりますので」

「かしこまりました」


 微笑むアウローラに向かって、西園寺はうなずいた。


 彼女はそれを見届けると、来た時と同じような綺麗なお辞儀をして出て行った。去った後でさえ花が香るようなさわやかな気配を残す、素敵な女性に思わず茜もうっとりと胸の前で手を組んだ。魔女は魔女でも、あっちは白魔女といった感じだ。


「……お取り込み中すいませんねえ。写真見てもらっていいですか。俺もさっさと帰りたいもんで」


 茜の夢心地は水沢の声で一気に終わった。そういえばまだ問題が残っていたな、と茜は思考を切り替える。


「ではこちらにお願いします」

「へいへい。つまんない写真しか撮れてないですよ。せめてレコーダーがあればなあ……」


 当てこする水沢をよそに、茜は写真をチェックしていった。メモリーカードには和やかに語り合う客たちやお菓子の写真が並んでいて、スキャンダルの欠片もない。実に健全な写真だった。


「今回の件では、あなたにもご迷惑をかけて、少し申し訳なく思っていますよ」

「いえいえ。報道にも、俺みたいに誠実で男気ある奴がいると理解していただければ、それで十分です」


 茜は水沢のカメラを抱えたまま口を開いた。


「……なら、その胸の奥にあるメモリーカードも出していただけます? こっそり潜り込ませたつもりでも、レストランの従業員が見ていましてよ」


 焦って逃げようとする水沢を、にっこりと微笑む西園寺が制した。彼がどう動くかなんてことは茜は想定済みで、言い含めておいたのだ。もちろん従業員もオーナーも全員水沢のことは知っている。


「すみません、ご協力よろしくお願いします」


 西園寺が言っても水沢がゴニョゴニョしているので、茜は一歩前に踏み出す。


「あら、盗撮の容疑で警察を呼んでもいいところを譲歩しているのですが……留置場で一夜を過ごす覚悟はおありかしら?」


 今度こそ本気の凄みを見せつけられた水沢は、顔面を奇妙に歪めながらメモリーカードを差し出し、そのまま逃げ去っていった。


「全く。あの悪行がなければ、もっと大成するでしょうに。お手数をおかけしました」

「いやいや、こちらも楽しかったですよ。まるで刑事になったみたいで」


 茜は水沢を撃退してから、藤波とレストランのスタッフに挨拶しに行った。高峯は茜や陸斗と同じ車で帰るので、支度をして茜の話が終わるのを待っている。陸斗は茜に叱られて懲りたのか、今日は大人しくすでに車中の人となっていた。


「この度は監視のみならず、大変お世話になりました。またご縁がありましたら、是非」

「いえいえ、高峯さんの手際が本当に良くて、うちのスタッフにも良い刺激になったみたいです。こちらこそ、またよろしくお願いします」


 藤波とスタッフに挨拶すると、今日の日程全てが終わった。その充足感を胸に、茜は西園寺に向かって掌を差し出す。最後のこればかりは、他の人間に譲るつもりはなかった。


「成功、おめでとう!」

「はい、おめでとうございます」


 西園寺も微笑んで、手を近づける。二人は夜のレストランに高く響く音を立てて、ハイタッチを交わした。

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