第2話:ごめんなさいってなに?

クラスのみんなの顔と名前は、すぐには覚えきれなかったけど、

僕の真ん前の席にいた梨紅りくのことは、転校して来たその日に、

いの一番に記憶に残った。


髪の長さは肩まで、身長は160センチくらい?、明るい性格の子でよく笑う、

そしてその美貌はなんと言ってもクラス中でも群を抜いていた。


僕はどっちかって言うと、人見知りで無理にはしゃいだりするのが苦手な性格

だったから逆に、明るく聡明でキラキラした梨紅のことが好きになった。


ときどきほおずえをついて窓から外を見ている梨紅の横顔を見るのも好きだった。

僕と梨紅は席が前と後ろということもあって、いつしか自然と話すようになって、

そして僕の気持ちは日増しに梨紅に傾いていった。


である日、僕は勇気を振りぼって自分の気持ちを梨紅に告白した。

でも梨紅の答えは「ごめんなさい」だった。

ごめんなさいってなに?・・・自信あったのにちょっとショックだった。


僕としては快くおっけ〜してくれるもんだと思ってただけに・・・。

僕だって、そんなにブチャイクな顔だってしてないし・・・性格だって

ヒネてないし断られるような要素なんて、な〜んもないと思ってたのに・・・。


僕たちいつも仲良くしゃべってたじゃん。

あれってただの社交辞令?

それとも他に付き合ってる彼氏とかいたりする?

毎日ストーカーみたいに彼女を見てるけど男の影なんかないし、そんなそぶり

だって見せたことないし・・・。


よく考えてみたら、梨紅くらいの綺麗な子なら彼氏のひとりくらい

いないのはおかしい気はしたけど・・・。


で「ごめんなさい」を言った後で梨紅が言った。


「男子の中で、私に告ったの小高くんが初めてだよ」


「え?・・・初めてって・・・そんなに可愛くて綺麗なのに?」


そしたら、


「小高くんの気持ち断ったのは、私たち付き合ったって、きっと別れる

ことになっちゃうと思ったからだよ」

「そうなっちゃったら小高君、嫌でしょ」


梨紅はそう言った 。


ごめんなさいってなに?・・・自信あったのにちょっとショックだった。

信じられない事実。


意味が分からなかった・・・なんで最初っからそんなこと決めつけるんだよ

って思った 。

そんなこと言われても僕は梨紅を諦めきれなかった。


「そんなこと付き合ってみたいと分かんないだろ・・・」

「最初は友達でいいからさ・・・って、それじゃ今とあんまり変わんないから・・・

まずは恋人以前・・・恋人未満・・・ そこからでいいからはじめてみない?」


「恋人以前、恋人未満って・・・言ってる意味同じじゃん・・・おかしい」


そう言って梨紅はクスクス笑った。


「あのさ・・・僕のこと嫌い?」


「そんなことないよ・・・本当は小高君が転校してきた時から気になってたの」

「はずかしいけど一目惚れだね」

「だからお付き合いできたらいいなって思ってたりはしてたけど・・・」

「でも、もしそうなったら・・・」


「もし?そうなったら?」


「なんでもない・・・分かった・・・おっけ〜だよ・・・」

「私、小高君の申し出受ける」

「小高君って、面白いから・・・」


「え?おっけ〜した理由ってそこ?」

「ん〜まあ理由はこのさいどうでもいいけど、でも後でやっぱりごめんなさい

はなしだよ?」


「うん・・・いいよ」


「じゃ〜改めてヨロシクね、今よりもっと好きになってもらえるよう努力

するから・・・」

「これからは小高君・・・じゃなくて宇宙そらって呼んで?」


「なに焦ってるの・・・小高く・・・宇宙そらくん」


梨紅はまたクスッと笑った。


「その代わり、言っとくけど後悔しても知らないからね」


「なに?後悔って?・・・」


「そのうち分かるよ」


それからは登校も下校も俺は梨紅と一緒だった。

それは普通なら、どこにもいる男と女の高校生カップルだった・・・。


つづく。


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