第26話『母との思い出』

 母との思い出は話し始めたら切りがない。

 高卒認定や不登校になった時の事。今まであらゆる迷惑を掛けてお世話になった。それはIさんやHY先生、IT君の比ではない。

 それでも親として母は私に尽くしてくれているのをつくづく感じる。今も実家住まいで、家事をやってくれている。たまに私も手伝うが、ほとんど母に頼ってばかりだ。

 それでいて今は住居の地区の理事長でもあるため、割と忙しく過ごしている。

 そんな母との思い出の中に、小学生の時に行った幕張メッセが古い記憶として残っている。当時も今も人気のポケモンの伝説のポケモン、セレビィを貰いに行ったのだ。映画も見たうえで貰いに行った際に、母が記念レゴを大量に買ってくれて、二人ではぁはぁ言いながら帰ってきたのは良い思い出だ。(ポケモンが目当てじゃなかったのかとか言わないで欲しい。セレビィは目的だったが、会場を回るうちに脱線しただけである)

 今も経理業務やパソコンを使う母だが、唯一の弱点はゲームが出来ない事だ。母の場合、指と頭が一致していないらしく、ゲームをやらせると即ゲームオーバーになる。それを見ていて笑えるのは内緒だ。

 その他にも、カードゲームを箱買いしてもらったり、ゲーム機は常に最新の物を買ってくれたりした。私がその点に関して文句を言う事は一つもない。

 母は私の憧れだった。最近になって憧れの対象が変わったのだが、十代から二十代半ばまで母が憧れの対象だった。

 今も、母親として一人の人間として尊敬している。多少暴走機関車的に猪突猛進する所はどうなのかとか、感情的になる点はどうなのかとは思うが、それでもやはり尊敬している。

 女手一つで私と姉を育ててくれた。その上、二人が欲しい物はほとんど買い与えてくれた。私や姉が学校などに行かなくても、文句は言えどそれを受け入れてくれた。姉が早くに結婚しても、私が何度挫けようとも、母はそのたびに愛情という言葉や態度で返してくれた。

 今も高齢者とは思えない程にパワフルに動いている母が、この先も元気にしてくれていたら私はそれで良いと思う。完璧じゃなくて良い。自己中心的でも構わない。

 それが私の母で、私が憧れた母でもある。

 何により、つい最近母に今までの経緯などを資料にして見せた。その時母は、私の事をそのまま受け入れてくれた。いじめた奴を絶対に許さないとも言った。

 私にとって、最良の味方になってくれる。

 だからこそ、あの頃に言っていれば何か変わったのかもしれないと思う。それでも母は私に言った。

「いいんじゃない。今だから言える事ってあるから」と。

 私は、そんな母に親孝行がまだ出来ない。だからこそ、まだまだ元気にしていて欲しいと思う。恩は返すから、だから、まだ元気で居てくださいと思うこの頃。しかし、私は母に何を返せるのだろうと思うこの頃。

 それがまだ見つからない私は、まだまだ子供なのだなと思う。それでも母が愛してくれて、受け入れてくれたからこそ、私はまだ希望や夢を捨てない。それを捨てた瞬間、私は母を裏切る事になる。

 だからこそ、私は母が与えてくれた希望や夢は持ち続けるという意思を捨てる事はしない。絶対に――。

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