第7話 その一口

 流石に2~3日経過した時、周は『もう病院へ行こう』と言ってくれたが、私は外が怖くて首を横に振った。

 陽の元へ出たら自分の変わった何かを認識してしまう気がして、人が自分をどう見るか怖くて、どうしても首を縦には振れなかった。


「でも……水分さえ飲めないのは流石に」

 周の顔が曇る。

 周の切羽詰まった悲しい表情が私の中で心にとても深く刺さり、私まで泣きそうになる。

 必死に涙を堪え、「大丈夫、飲むから」となんとか経口補水液――『飲む点滴』と言われるドリンクを含んでみた。


 ひとくちふたくち飲み込み……喉がそして胃が拒絶する。


 ゴホッゴホッ──……。


 「大丈夫か!」

 むせてしまった私の背中を慌てて擦ってくれる周の掌は、とても温かい。

「ごめん、大丈夫」

 そう答えるけど、自分自身の不甲斐なさに唇を噛みしめる。


「少しずつでいいから。ほら、スプーンとかでも」

 そう言って周がスプーンですくってくれた一杯をスプーンごと受け取る。


 しかし、そのひとくちはとても大きかった。


 覚悟を決めて口に含み──喉を通っていく感覚が身体に響く。

 だが、先程のムセや嗚咽は起きなかった。


「の……めた……」

 私は嬉しくなって、周の顔を見る。

「あ……」

 それは周自身も気付いていなかった。周の瞳から頬を一筋の涙が流れ落ちる。


「いや、なんでもない。それにしてもよかった」

 そう言って、私を抱きしめる周。

 精一杯声を押し殺しているが、泣いているのは私にも感じていた。

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