第2話ギターと男
「キィィーーン」
防音室の半開きの扉から、5月の柔らかい空気を切り裂くような音が聞こえてきた。
私の、下駄箱に向かうための足は何故か止まってしまっていた。
人生の中で一度も聞いたことのない音に少し興味を持った。そして、気がつくと私は防音室の中が見えるところまで来ていた。
普段、授業で使う教室よりもひと回り小さい部屋の中には色々な楽器や機材が所狭しと置かれていてた。その真ん中で少し身長が高い男の子がエレキギターを弾いていた。
なんの曲かはわからなかったが、素人の私でも聞き惚れてしまうようなカッコいい演奏だった。
それからしばらくして、曲が終わり男の子が後ろを振り返り目があった。
「何?」
整った顔立ちだが、どこか影を感じるその男の子はぶっきらぼうに私に尋ねてきた。その態度に私は少し威圧感を感じ、たじろいだがこの演奏の感想をどうしても伝えたくて口を開いた。
「途中から聞かせてもらいました!すごくかっこよかったです!」
すると彼は
「あっそう」
といい、またギターの弦に指をかけようとした。どうしても話をしてみたくなった私は慌てて声をかけた。
「いつもここでギターを弾いてるんですか?」
すると彼はこちらを向いて少し面倒くさそうに答えた
「たまに使わせてもらってる。一人で弾くのにちょうどいいから」
他に何か?とでも言いたげな顔をして彼はこちらをみていた。このままでは追い出されてしまうと思い私は少し思い切ったことを提案することにした。
「あの、他の曲も聞いてみたいので中に入ってもいいですか?」
すると彼は、少し嫌そうな顔をして少し考えこう答えた。
「…いいよ。ただ、場所差狭いからそこで聞いて」
と言い、部屋の隅の小さなスペースを指差した。
沢山の機材を踏まないように防音室の中を歩いていくと、
「名前は?」
と聞かれた。
「新風日彩っ!」(しんぷう ひいろ) と私は足元に注意を払いながら答えた。すると、彼は
「俺は来瀬佑」(くるせ ゆう)
そう答えた。
Hero is Coming! 豊嶋裕二朗 @Toyosima2
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