第20話 領地開拓


 契約書通り、デニールが担保としていた領地は全てガーネット商会が貰い受けることになった。


「クゥゥゥ! あのガキぃ。王子だからと……我々ギニスの領地を」


「ですが、契約は契約ですので——ディエゴ・ロッシ・ギニス様。本日より、この領地は我々、ガーネット商会が貰い受けます。早速、都市の名前も改名しようかなぁ」


「ぐぬぬっ。認めんぞ、絶対に取り返してやる!!」


「はい。いつでも、それほどのマニーのご用意——お待ちしておりま〜す」


 デニールの朱印が押されている、魔導契約書の効果は絶対であり、破る事は出来ない。デニールの契約した内容はこうだ。


♦︎♢♦︎


 1: デニール・ゴッドウィンはガーネット商会の施設費、魔族の血清費、運営費、研究費を全て買収し、今後はデニール・ゴッドウィンを商品の登録主とする


 2: 担保として、デニール・ゴッドウィンを領主としている土地の税収を受け渡す。契約年数は15年。


 3: デニール・ゴッドウィンが死去した場合には、契約としてギニス領の半分の土地をガーネット商会のものとする。これに関しては、ディエゴ・ロッシ・ギニスは関与しない。


♦︎♢♦︎



 

 要するに、ここら辺一体の領地半分は商会の管轄下に置かれた。早速、ここら辺で一番栄えていた都市の名前を改名した。


 名前は、『革命都市オクタゴン』。


 この大陸で唯一、種族や階級を越え、種族権利を主張出来る革命的な都市だ。オクタゴンは八戒から取っており、この場所を中心に、8つの街を建国する予定である。


 表向きには、一般的な都市だが、ここには僕らと同胞達のアジトを建設する。土地的に、どこでも行きやすくも非常に便利だ。


 初めの頃は、デニール殺害に関して、ガーネット商会が疑いをかけられたが、マッテオや闇商会との繋がりで、彼らに助けてもらい、全ての疑惑を打ち消した。


 その後も、プロテスタ教の残党や町にあった教会のエセ神官は拘束して、階位を剥奪。街の清掃員として、奴隷のように働かせている。


 だがまぁ、数週間もしない内に、ディエゴ・ロッシ・ギニスの手の者がガーネットを襲いに来たり、僕のことを暗殺しに来た。


「それで、この人たちはどうしましょう。主人様?」


「うーん。そうだなぁ。人手は足りてるんだよなぁ……首をギニスさんに送るのもアリだけど」


「ヒィィ。お助けを! ご慈悲を。何でもします。あなたの命令とあれば、ギニスの首を取ることも!!」


「そうだ! 仲間全員集めて、戻って来てよ。逃げたら、どうなるか——分かるよね?」


 暗殺者たちはコクリと首を縦に降り続け、ソータとジータのペア二人を監視役とし、ギニス領へと派遣。


 数日もしない内に、50人規模の暗殺集団が集まった。


「これで全部?」


「主人さま〜! これで全部です。オレが保証しまーす!」


 ジータは頭は悪いが、嘘を絶対に付かない性格だ。彼の言葉を信じる。


「じゃ、君たち今から畑仕事ね。サボったりしたら、罰が下るから。ちゃんと仕事してれば、ご飯も食べれるし、住居も与える。殺人なんてやめて、酪農やろう」


 僕は彼らを従わせて、50人規模の良い働き手を会得した。


 こうして、オクタゴン(仮)の都市を中心に、周辺では農場を耕し、集めた資金で、インフラ整備の労働組合と結託。


 周りの村を結ぶような、線路工事も進めた。


「収穫祭が終わるから、僕は帝都に帰らなきゃいけない。週末には時間を作って、この場所と帝都を往復する。行こうか、オフィーリア」


「ニャ〜〜(了解です。レイ様)」

___________________________________



 それから数ヶ月。


 僕は約束通り、革命都市オクタゴンと帝都を往復しながら、領地開拓に努めた。


 前まで、どんよりとしていた獣族、エルフ、ドワーフなどの異種族の顔は明るくなり、帝都やその他の地方貿易も盛んになった。


 人が増えるに連れて、雇用が必要だ。まずは酒場を幾つか開店、それに併せて酒を専門に作る酒造業を発展。


 使うのは、ブドウ酒、発酵させた麦の酒、魔物の死骸のエキスを調合した魔物酒など様々だ。


 これも全て、僕とガーネットがあらゆる本から得た知識で作り出した。


 魔物から領地を守るために近辺の警護も必要だ。オフィーリアの働きかけで、帝国の兵士の駐屯地を建設し、留まってもらう事を可能とした。


 後は傭兵団や、ギルドを設立して、冒険者を集め、魔物討伐などもやらせないとな。


 色々とやる事が山積みだ。


「いやぁスバラシイ! 前までとは全く違う街になりましたねぇ。このオクタゴンは」


 酒場では闇商会の人たちが普通に飲み食いしている。


「いえ。元々の資源が合った事と、町民の努力の賜物ですよ」


 僕はカウンターで偽酒を飲みながら、マッテオと会話していた。程よい香りのする、ぶどうジュースだ。


「それを指揮出来ている貴方さまの知恵の結晶といえば良いのか、暗黒仮面殿」


「それで、今夜はどんな話で?」


「フフフッ、話が速い。これほど発展して来たのです。娯楽というものが必要でしょう」


「娯楽か。でもそれって、必要ですか?」


 今のところだと、市場、酒場やレストランぐらいしか無い。一部の人が出入りできる、闇市場はあるけど……。


「分かっておりませぬなぁ。娯楽とは最高のエンタメですよ。金が回り、都市が潤います。今でも、お隣のギニス領とは拮抗してますでしょ」


「そうだけども……」


 ギニス領は土地が減ったからと言って、無闇に税収を上げるなどはしなかった。それよりも、町民確保のために、閉鎖的な土地になっている。

 

 そうする事で、オクタゴンへの民の流入を防いでいる。これ以上の労働的な損失はしたくないのだろう。だから、暗殺者を雇い僕らを殺そうとしてきたのだ。


「娯楽が増えれば、噂も広がり、雇用も増加します。人の出入りが増えれば、自然とギニス領の民はこの都市へと入ってくるでしょう」


「ふーん。何かいい案でも?」


「ええ、是非ともいい案があります」

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