第19話 女子たちの秘密の会話

 俺はアリスにも告白された。あれが夢なのか現実なのか分からない…ならよかったのに、現実だとはっきりしている。アリスがどうして俺のことを好きになってくれたのか分からない。けど、応えたい。分からないなら、これから知ればいいだけだから。

 『初めて上位種族の竜種と結ばれました。それにより共に歩く者を獲得しました。また、条件を満たしたことでハーレムの主を獲得しました』

 一晩考えた俺がそう決意すると、そんなアナウンスが聞こえてきた。どんな効果なのか調べると、どちらもチートなものだと分かった。ランクもS Sにまで上がっていたけど、まだまだ油断はできない。

 【…新称号

・共に歩く者→自身と友情が超の人に不老の能力を与える。不老の能力を持つ人は寿命の概念がなくなるが、病気などにかかることはある。また、この能力は付与された本人、称号保有者のどちらからでも任意に解除することができ、称号保有者も自由にON/OFFの切り替えができる(現在の不老:0人、自身の能力:ON)

・ハーレムの主→全ステータスを友情が超の人の数×10%ぶん増加する。これは友情が超の人全員に効果がある】

 俺はより一層気を引き締めてもっと強くならなきゃいけない。ネロの頼みもあるし、魔王や他の勇者に決して負けないくらい強く…。

 …でも、それで彼女たちに我慢させちゃダメだよね。明日あたりからみんなとデートしようと誘ってみようかな。


〜時間が遡ってサクラ視点〜

 夜、私はこの世界にきて初めて一人になりました。後はもう寝るだけ…のはずなのに、何故か眠れません。体は疲れてるのに、言い知れない不安が私の胸の中でどんどん大きくなってしまいます。

 「…いっちゃん」

 無意識のうちに私は最愛の彼の名前を呟いていました。

 「…寂しいよ」

 口に出すことでモヤモヤしていた私の感情が分かりました。それでも、どうしてそう思うのか分かりません。家でも一人で寝てたのに、そんな風に思うことはありませんでした。

 …いっちゃんの部屋に行けばいいけど、アリスがいるのかもと思うと、邪魔をしたくありません。

 コンコン

 「サクラ、起きてますか?」

 私がベッドの中で悶々としていると、ドアがノックされてシンシアの声が聞こえてきました。私がドアを開けると、思った通りシンシアがいました。

 「どうしたの?とりあえず入って」

 「…うん」

 どこか遠慮してるようなシンシアを促して二人でベッドに座りました。

 「…ごめんなさい、サクラ。私がこんな場所に呼び出さなきゃよかったのに…。私が自分のことを優先しちゃったから…」

 躊躇っていたシンシアが話し出すのを待っていると、彼女はそんなことを言いました。謝ってもらうことなんてないけど、まだあまりシンシアと話せてないことを思い出しました。まだ出会って一週間なので、積み上げてきた時間が少なすぎでした。私はこの機会に彼女とじっくり話し合うことにしました。眠れなかったのでちょうどいいです!

 「謝らないで。私は今、幸せだよ。好きな人と一緒になれて、同じ人が好きな仲間もいる。きっと、異世界召喚くらいのことがなきゃここまでの幸せはなかったよ。…だから、そんな謝るんじゃなくて、お互い頑張ろう!くらいの方が嬉しいな」

 「サクラ…。うん、分かったよ!一緒に幸せになろうね!もし何かあれば言って。私にできることならなんでもするから」

 シンシアは真っ直ぐな目でそう言ってくれました。それが嬉しかった私は少しだけ恥ずかしかったけど、今困ってることを打ち明けることにしました。

 「…じゃあ、シンシアも一緒に寝て。何だか眠れなくて…」

 「あっ、サクラもだったんだ。実は私もなんだ。…大きな部屋に一人ぼっちなのは落ち着かなくて…」

 こうして同じ状況だった私たちはおかしくなって笑い合いました。ひとしきり笑い終えると同じベッドに入り込みました。そしていっちゃんとのことについて、どんなことをしたいのか話し合いました。同年代で、しかも同じ人が対象の恋バナができるなんて思ってもいなかったけど、シンシアとの話は尽きることがありませんでした。そして私たちは気付かないうちに眠りに落ちていきました。


〜時間が遡ってアヤ視点〜

 私はイツキが異世界から来たなんて知りませんでした。…王女さまと一緒にいれるなんて、只者じゃないって分かるはずなのに、イツキはカッコいい彼氏だってことだけで考えるのが止まってしまっていました。亜人のいない世界から来た彼が私に嫌悪感を抱かなかっただけなのは分かりました。でも、私はやっぱりイツキたちとは違うんです。

 …こんな耳や尻尾がなかったらよかったのに。

 私は何度思ったか分からないことを繰り返し思いました。それでも、私の他にヒューマン族以外の彼女がいます。私は彼女たちと話がしたくて、部屋を訪ねました。

 「…イツキは私たちのことをどう思ってるんだろう?」

 私はメイベルにそんな不安を明かしました。スラリンは部屋にいないのか、もう寝ちゃってるのか返事がなかったので、私はメイベルと二人きりです。

 「どうって?アヤは可愛いと思うよ?」

 メイベルはそんなことを言ってくれました。…メイベルは彼と違うことが気にならないのでしょうか?

 「ありがとう。…でも、もし私たちもヒューマン族だったらって…」

 「そこら辺はしょうがないんだしさ、今を楽しむ方が大切だと思うよ。結局は別れることになるんだしさ、私は彼と過ごした思い出がほしいんだ」

 私は前向きな彼女が羨ましいと思いました。きっと彼に聞けば気にしなくていいって言ってくれると思います。そして、それは嘘じゃないはずです。…それでも、私は同じがいい、そう思ってしまいます。

 「…私は暗いのかな?」

 思わず愚痴っぽくなってしまいました。こんなことを言うつもりはなかったのに…。

 「別に普通じゃない?私は別れが避けられないけど、アヤは違うでしょ?一生彼と一緒にいれるかもしれない。なら、全力を尽くそうとするのはおかしくないよ」

 「!?ご、ごめんなさい」

 その言葉に私はハッとしました。どうしてメイベルに話してしまったのか。竜人の彼女は500年以上生きると分かってたはずなのに…。やっぱり私は自分のことしか考えてないんですね…。

 「どうして謝るの?寿命は仕方ないよ。…私が言いたいのは今さらどうにもならないことで悩んでもしょうがない、ってこと。イツキはきっと私たちがどんな姿でも変わらなかったと思うよ。重要なのは、今、イツキの彼女でどう思ってるか、ってことだけ」

 「…今、どう思ってるか」

 それには自信を持って答えることができます。だって。

 「ありがとう!何か分かった気がするよ!」

 まだ悩んだり迷ったりするけど、今の私は一人じゃありませんでした。大好きな彼氏と仲間の彼女たちがいます。

 自分の部屋に戻った後の私の胸の中はもうスッキリしていました。

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