間話1 きっかけ(サクラ視点)

 私は蒼井 桜です。突然ですが、私には好きな人がいます。彼は私の幼馴染みで、とても優しい人です。最初に会ったときは、私はとても暗い性格でいつも一人でいました。そんな中いっちゃん…彼は私に声をかけてくれました。私は人と話すのが苦手で、まともに会話することすらできませんでした。私が黙ってしまうと、彼はいつも決まって微笑みながら、「焦らなくていいよ」と言ってくれるのでした。私はそれだけで嬉しくなり、胸がポカポカするのでした。

 そのことをお母さんに話すと、「それは恋だ」と言われました。その時は分からなかったけど、今ならはっきりと分かります。私はいっちゃんのことが好きなんだって。

 私はたくさん努力しました。人と進んで話すようにしたり、美容にいいと言われていることをしたり、勉強も運動も頑張って、どれも人並み以上にできるようになりました。彼に少しでもよく思ってもらいたい、その一心で必死に努力しました。それでも、彼の近くにいられたのは中学生の頃まででした。

 中学生になるころには私の努力は実を結び、周囲と比べても頭一つ飛び出たようになっていました。そんな私がいっちゃんの側にずっといたからか、いっちゃんはいじめられるようになってしまいました。

 その時の彼は同級生から呼び出されることが多くなっていました。最初は気にしなかったけど、戻ってくる時はいつも少し辛そうでした。幼馴染みの私じゃなきゃ気づかないような些細な変化だけど、私にははっきり分かりました。彼は隠そうとしているみたいだったので、触れることはしませんでした。

 でも、ある日私は我慢できなくて彼の後をこっそりつけることにしました。そしたら、殴られている彼がいました。私はパニックになって、どうすることもできませんでした。どうしていっちゃんがぼろぼろになってるの⁉︎なんで私に相談してくれないの⁉︎そんな思いが頭の中をぐるぐると回っていた。

 彼はどんな悪口を言われても言い返しませんでした。聞いてる方がイヤになるような罵詈雑言に顔色一つ変えなかった。けど、一人の男子が「こんなヤツが好きなんて桜も見る目ないな。…それなら俺たちで桜を可愛がってやろうぜ!そんで、飽きたら適当に理由つけて捨てればいいだろ!ギャハハハ」と言った瞬間いっちゃんはその男子の胸ぐらを掴んだ。そして、私も聞いたことがないような低い声で、「…さーちゃんには手を出すな。…もし悲しませたら俺が許さない」と言いました。いじめていた男子たちは気圧されたように「…分かったよ。蒼井さんには手を出さない。それでいいか?」と渋々といった感じに胸ぐらを掴まれた男子が言いました。いっちゃんは「ああ。」とだけ言って手を離した。そのままいっちゃんをいじめていた男子たちは立ち去っていったのでした。

 このとき、私は初めて自分の恋心を自覚したのです。…その結果、私はいっちゃんとうまく話せなくなりました。顔を見るだけで嬉しくなって、目が合うと顔が真っ赤になった。自覚したばかりの頃は話しかけられてもおどおどしていた昔以上に話せなくなった。そのまま彼とは日常会話しかできなくなっていました。それでも近くにいたくて彼と同じ高校に進学して、そのまま進展がなく運命の月曜日を迎えた。そのときには彼とまた話せるように意識して話しかけていた。一緒に帰りたいって言ってるのに、どうしても「いいよ」って言ってくれなかった。その日もいつも通りに話しかけた。チャイムが鳴ったから席に戻ろうとしたら、青い光に包まれた。そしてそのまま異世界に飛ばされていた。

 そこで私たちはシンシアという王女様と会った。そして自分のステータスを見るように言われた。

 【サクラ=アオイ 性別:女 年齢:17

職業→ヒーラー(小)

生命力 205→200(+5) 205

魔力  200→200(±0) 200

筋力  200→200(±0)

防御力 210→200(+10)

魔法力 200→200(±0)

精神力 210→200(+10)

速力  205→200(+5)

総合ランク S

スキル 

・博愛主義者→全ての回復魔法を使用することができる。

称号

・異世界人→全ての言語を理解可能

・努力家→ステータスupに必要な魔石が倍になるが、全てのステータスの上昇値が3倍になり、限界もなくなる

・恋する乙女→好きな人の近くにいるとステータスが上昇していく。現在は一日につき全てのステータス+1】

 私がこれを見たときはチャンスに感じた。彼の近くにいればステータスも上がるから、近くにいる理由が見つかったような気がした。そして、彼に話しかけたら彼の総合ランク?は最低のGだってことが分かった。なんて言っていいか分からなくて、声をかけられなかった。そのままイヤな感じの王様が出てきていっちゃんが出ていくことになっちゃった。そのとき彼はシンシアと話して私の幸せを願ってくれた。ここで行動しないともう会えないような予感がした。その予感に突き動かされて、一緒に行くことを頼み込んだ。その結果、みーちゃんの助けもあって、いっちゃんと一緒に行けることになった。

 その後シンシアは私の願いも聞いてきた。私はいっちゃんといれるだけで幸せだから、断ろうと思った。だけど、頭の中にみーちゃんの声が響いてきて、(もし望みがないなら、シンシアさんのことを連れ出してやってくれない?この王宮でまともなんは彼女だけや。わいらは大丈夫やから、王女様も幸せを掴んでほしいんや)と言ってきた。私は驚いて一瞬だけ飛び跳ねそうになった。(あぁ、驚かせてしまって堪忍な。だけど、なるべく気付かれんようにしたいから、協力してな。…このままだと王女様は多分壊れちゃうで。こんなことを頼めるのはさーちゃんだけなんや)

 私はみーちゃんの頼みを引き受けることにした。助けてもらった恩もあるし、王女様とは仲良くなれそうな気もしていた。だから、シンシアさんに付いてきてもらうことにした。シンシアさんは物知りで、説明も上手だった。

 その後私たちは王都の外に出ることにした。そして私たちはスライムを見つけた。私がそのときに最初に感じたのは恐怖だった。今まで死とは程遠い平和な国で暮らしてたから、急に自分がすぐに死ぬかもしれないと思い体が動かなくなった。そんな中、一匹のスライムが他のスライムに襲われているみたいだった。いっちゃんは迷わずそのスライムを助けるために動いた。私が動けるようになったのは、彼の悲鳴を聞いた後だった。自分が死ぬよりも大好きな人が死んじゃう方が怖かった。でも、私が駆けつける前に全て終わっていた。…私が一番強いステータスのはずなのに何もできなかった。そんな後悔ともっと強くなりたいという決意だけが残った。

 その後はゴブリンに襲われた。そこでも私がやることはなかった。いっちゃんが真っ先に飛び出していって、残ったゴブリンはシンシアがまとめて倒してしまった。シンシアが私のためにゴブリンを倒してくれたのが伝わってきたから、私は何も言えなかった。そして、いっちゃんがスライムになっちゃった⁉︎どうやらいっちゃんのスキルのようだった。そしたら、シンシアにいっちゃんの抱っこを取られた。私は全然気づかなかったから少し悔しかった。

 私は彼が初恋で他の男の人には興味がなかったけど、シンシアは心に余裕があるように感じた。この世界は一夫多妻が認められているみたいだけど、私なんかよりもシンシアの方がよっぽどできる女って感じで、とても敵わないと思った。せめて彼の近くにいたいと思っていたらシンシアに告白まで取られちゃった…。私も流れで告白しちゃったけど、すごく怖かった。もう元には戻れないことは分かっていたから、もし私だけ断られたらどうしようってことばかり考えていた。実際には数秒だったはずだけど、私にはそれが数時間にも感じた。ここから逃げ出したい、いつまでもこのままでいたい、返事を聞くのが怖い…。そんなことばかり考えていた。けど、ここで逃げる方がよっぽどイヤだった。それは私の恋心を否定するような気がして、もう二度と告白なんてできないって分かっていたから。

 私たちの告白は彼に断られた。私は今まで感じたことがないくらいの絶望を感じた。もう一緒にいることができない。そんな思いが胸の中をぐるぐる回って思考がどんどん悪い方に引っ張られていった。私のことが嫌いなのかもしれない、なるべく離れていたいのかもしれない、もう会えないくらいならこんな世界にいる意味がない。私は堪らずいっちゃんに私たちのことが嫌いなの?って問いかけた。けど、彼はすぐに否定して気持ちを話してくれた。彼は私たちのことを第一に考えてくれていた。私はいっちゃんのことがより好きになった。そして、もっと彼の力になりたいと思うようになった。

 そのときに『恋の進展を確認。恋する乙女が発動。全てのステータスが50上がります。更に、努力家が発動。ステータスの上昇値が3倍になります。よって、全てのステータスが150上がりました。また、関係が深まったことにより、一日当たりのステータスが+2となりました。』という声が頭の中に響いた。だけど、嬉しすぎてそれも気にならなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る