log16...HARUTOを謀り、HARUTO共々謀られる(記録者:強化人間INA)

 あたし達のチームは、飛行艦の一隻を制圧していた。

 ブリッジは落としていない。KENケンが銃口を突き付けてホールドアップに留めていた。

 何故か?

 あいつらの真上に位置取りし続ける為だ。

INAイナさん、今です!》

 KENケンが叫ぶや否や、ブリッジにショットガンを撃ち込んで破砕。

 不穏な軌道を描いて墜落し始めた飛行艦から、あたし達は飛び降りた。

 眼下、今しがたHARUTOハルト達がSBスペアボディ部隊と機銃類を全滅させた艦目掛けて。

 MALIAマリアのアーテル・セラフがブリッジに止めを刺す直前だった。

《おっと! すいませんね!》

 KENケンが白々しく詫びてから、MALIAマリアにショットガンを撃った。

 無数の火玉が拡散し、何発かはアーテルの機体を叩いた。

 一応、今回のあいつらは“味方”ではある。

 この手のクエストでのフレンドリーファイアについては……ゲームのルールとしてはともかく、プレイヤーモラル的にはかなりグレーゾーンな行為ではある。

 あまりやり過ぎると反撃されても文句は言えないけど、散弾でブリッジを狙った結果なのだから仕方がない。

 あたしもあたしで、爆導索を振るった。

 本人には退避されたけど、MALIAマリアが操作しているらしい大型オービットが爆導索を射撃。ブリッジを有効爆破範囲に入れる前に誘爆させられた。

 けれど連鎖する爆炎が視界を遮るのには充分だった。

 そして。

 いつもはあたし達の盾となっていたRYOリョウのロイヤルガードが、アルバスのビームマシンガンやUMGPアンマークド・グッドプロダクトの追撃にも耐えながら、ついに両手の無反動砲をブリッジに撃ち込んだ。

 あいつらが落とす筈だったこの艦は、RYOリョウの吹き込んだ爆轟に内側から蹂躙され尽くし、大きく断末魔の震撼を見せて沈み始めた。

 作戦は成功した。

 一隻、撃破。

 当然、SBよりも艦を落とした方がスコアは高い。

 そして「あいつらがこの艦を落とす為に費やした時間と弾薬」を無に出来た事も相対的に大きなダメージとなった。

 モニタに表示されている撃墜成績を見ると、あたし達のチームのグラフが大きく伸びて、差を見せた。

 あいつらも思う所は多々あるだろうけど、ここに居続ければ沈没艦ごと水底行きだ。

 あたしらも、あいつらも、全員散開して艦を飛び移った。

 このリードは大きい。

 行ける。

 後は、余計な事をせず、セオリー通りにSB部隊と艦を落として行けば良い。

 あちらの意趣返しに注意を払いながら。

 

 爆発炎上しながら沈み行く艦を背中に、撃墜成績を確認。

 依然、あたし達が大きくリードしている。

 やはり、最初の横取りが効いている。

 そして、本来の作戦も大詰めだ。

 第八宇宙港が視認出来る所まで来た。

 例によってSB基準の広大な施設で、大都市くらいのスケールはあるけど、宇宙母艦を見付けて破壊すれば、あたし達がリードしたままクエスト終了となる。

 そして。

 あたし達は三手に別れてターゲットを探し出した、その時、

《タイニーソフトウェアの社員各位、業務の遂行ご苦労様です》

 不意に、通信が入った。

 この声は、確かクエスト受注時のブリーフィングで概要を説明していた宇宙開発部の。

《依頼の快諾と手際の良い遂行、誠にありがとうございます。

 ただ、残念なお知らせがございます》

 

《こちらの宇宙港には、最初からターゲットの母艦などございません。

 依頼内容に虚偽がありました事をお詫び申し上げますが、わたくしとしても業務の一環でして。

 つきましては、あなた方にはここで死亡して頂きたく存じます。

 “国家”再興の礎となれる事、栄誉に思うが良い!》

 

 つまり。

 あたし達は、タイニーソフトウェアに潜伏していた奪還省のスパイに、ダミーの依頼で誘き寄せられ、始末されようとしている……と言う内容のクエストだったのか。

 元々の話では、宇宙母艦一隻を落とせば終わる筈だったが。

 

 これ見よがしに海面が隆起して、滝のような水のベールを流しながら、SBの何倍もあろうかと言う巨物が浮上した。

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