log08...核搭載武装戦艦防衛作戦(記録者:YUKI)

 いよいよ、社命をかけた戦いが始まる。

 戦場は大きく二面展開される。

 タールベルク本社の死守と、そこへ駆け付ける予定の核搭載武装戦艦“サガルマータ”の護衛。

 アタシらのチームは二手に別れた。

 本社の死守はMALIAマリアTERUテルで参加する。

 サガルマータ護衛のほうは、アタシとHARUTOハルトだ。

 

【メインシステム 戦闘モード起動】

 ほとんど人間の肉声と区別のつかないCOM音声が、アタシに作戦開始を告げる。

 ま、自分で言うのもなんだけど、この機体“アンマークド・グッドプロダクト(以降UMGP)”、外見はやられ役の量産機っぽいが、スペックは一級品だ。

 頭部も“それなりに”良品を使っている。

 長年、コツコツ貯めたお小遣いで買ったってトコ。

 目立たない黒とパープルのカラーリング、全体的に流線型なフォルムの中量二脚タイプ。

 武器はビームライフルと実弾マシンガン、長めのレーザーブレード、背中の武器ハンガーにバズーカもセット。

 今日は持ってきてないけど、予備にレーザースピアやパルスシールド、小型グレネードランチャーもある。任務の内容次第で入れ換えてるね。

 ほか、強いて特徴的な点を挙げるとしたら、ステルス機能がある事くらいかな?

 

 さーて。

 アタシらが乗る巨大メカをして、見上げるスケールの、ガチで「山のような」武装艦が、タイニー・ソフトウェア占領下の国道を均しながら突き進んでるよ。

 奪われた領土を強行突破して、後方の本社要塞へ救援に向かっているイメージで考えてもらえれば。

 しっかし、いつ見てもサイズ感が滅茶苦茶だよ、この世界ゲーム

 薙ぎ倒される電柱とか樹木がマッチか爪楊枝に見える。

 現実の原発一基丸々くらいジェネレータが入ってるのかね。

 資源的にも物理的にも、VR世界だから許される無理だ。

 あんなものを走らせて喜ぶか、変態どもが。

 もちろん、単なる走る鉄塊とはワケが違う。全周囲に大口径のバルカン砲、対艦主砲レベルのレーザーキャノン、エトセトラエトセトラがびっしり装備されている。

 どれもこれも、掠めただけでSBすらオシャカになる。

 で、まあ。

 今回、アタシらはそんなバケモノを護衛する側だ。 

 一見して有利って思うじゃん?

 そうでも無いんだなコレが。

 古くからある“ゲームバランス”ってヤツさ。

 何だかんだ、襲撃側にとってもクリア出来るような塩梅になってるワケ。

 この世界ゲームのプレイヤーは皆、。一人一人が主人公であり、同時に雑魚キャラってね。

 もちろん、アタシも、そこのHARUTOハルトも。

 早速大挙して押し寄せてきた、あいつらタイニーの兵隊どもも。

 

「戦力比を表示して」

 アタシがコックピットに搭載されたAIに命じると、即座に答えが返ってきた。

 ざっくり解説すると、両軍50機ずつくらい。

 ま、大体相場通りだね。

 もちろん、主戦場となるのは武装艦の周囲や船上なのだろうけど。

 護衛対象をフィールドにして戦うのはよろしくないね。

 戦地の中でも端っこ、ある程度、へんぴなトコで何機か落としておくのも大事な仕事だろう。

 てコトで、アタシら二人は艦から少し離れた荒れ地で敵のチームをひとつ迎え撃った。

 敵は三機。新入り抱えながら数的不利か。

 アタシもよくよく貧乏くじ引かされるモンだ。

「敵機体の基礎情報、表示」

 

 ・敵機A 重装タンクタイプ 機体名:ロイヤルガード

 ・敵機B 軽量四脚タイプ 機体名:九頭龍くずりゅうMARK Ⅱ

 ・敵機C 軽量二脚タイプ 機体名:モスコミュール 

 

 次、アタシが目視した情報。

 タンク型のロイヤルガードは全身これ、目に痛い金ピカだね。武装は右手に実体シールド、左手にエネルギーシールド。両肩に一応、成形炸薬弾の無反動砲が一門ずつか。

 ヤバそうなのは装甲の方だね。

 あからさまな高内製。

 特にコックピットを守る胴体パーツは“猿田彦サルタヒコ”だろ、アレ。

 見るからにメタボ体型な厚みの装甲はもちろん、非実体障壁のパルスシールドを内蔵しており、挙げ句の果てに、マス目のような爆発反応装甲がコーティングされている。

 エナジー弾はパルスで減衰し、爆発反応によって実体弾の通りも悪い上、その爆発に巻き込まれかねないので近接戦闘すら仕掛けづらい。

 どうやら、センスが悪いのはカラーリングだけのようだ。

 軽量四脚の九頭龍くずりゅうMARK Ⅱは……光沢の無い青緑ベースに、あちこち黒いラインが走ってる。アタシの機体と同じで、比較的流線型のフォルムだね。明らかに機動力を突き詰めている。

 武装は……ちょっとわかりにくいね。

 辛うじて見えるのは、右手に蛇腹状の実体武器……多分、ヒートウィップか。

 射撃武器らしきものは見当たらない。

 内蔵インナー装備で隠されているにしても、あんなスリムボディでは大がかりなモノは仕込めまい。

 近接特化の高機動だと言うのなら、腕か脚にジェネレータ直結型のレーザーブレードを内蔵している線が濃厚……と言いたいが、こう言う思い込みは足元を掬われる元だ。

 わからないコトは潔く諦め、さっぱり考えないに限る。

 どうもあの機体、セオリーからズレた、何らかの“こだわり”を感じるし。

 軽量二脚のモスコミュール。黄色とライムグリーンの爽やかな色合い。まあ、ツレ二機とは逆に、そしてアタシのUMGPと同じく、無難なコンセプトが見て取れる。

 軽ショットガン、握りグリップタイプのジェネレータ直結型レーザーブレード、両肩に小型連装ミサイルが一門ずつ、か。

 もう一声、隠し球があるかもね。

 HARUTOハルトのアルバスもだが、教科書通りの機体構成のヤツほど予期せぬ“切り札”を隠しているコトが多い。

 

 というワケで、前置きは長くなったが交戦開始。

 尺もそろそろヤバいし、要点を絞って解説していくよ。

 まず、アルバスが開幕一番、背中のショットガン・ウイングをぶっぱなしたね。

 視界一杯に散弾が襲いかかる。

 九頭龍とモスコミュールは跳躍して回避、金ピカのロイヤルガードには弾幕の端っこが掠めたけど、パルスと爆発反応装甲の二層式アーマーが、ただでさえ堅牢な重装甲をほぼ無傷で守り抜いた。少しは凹んだか?

「おい、切り札……」

 って一瞬思ったけど。

 構わず突進するアルバス、そして、動きの鈍った敵機を見て考えを修正。

 むしろ主砲の威力を先に見せてビビらせる。

 金ピカタンクはともかく、ほか二機は機動力に特化しているであろうと考えると、それもひとつの手だろう。

 だが、この判断を的確な場面で出来るヤツってのは、そうは居ない。

 HARUTOハルトにとってに過ぎないのかもしれないね。

 このゲーム自体は新参でも、多くの世界ゲームを生きてきたヤツの強みを感じる。

 まあ、まだ初手だ。彼の評価を決めるには早計だろうが。

 アルバスが、お得意のエナジー・実弾二刀流のフルオート射撃を浴びせながら、モスコミュールに襲いかかった。

 そこへ九頭龍が横槍を入れに行く。

 どうにも、アルバスまっしぐらって愚直さだね。

 機体構成といい、コイツも新参なのかもしれない。

 そして、そういうヤツが、一番タチが悪いんだよ。

 アタシは九頭龍へマシンガンを撃って割り入る。

 なるべく射線にモスコミュールが入る位置取りを意識して、アルバスの援護も兼ねる。

 九頭龍が、分かりやすいタイミングでヒートウィップを発射。アタシはブーストを噴かせて回避。

 おっとモスコミュール、アンタには攻撃させないよ。ビームライフルを撃ってやり、順当に躱された。

 九頭龍が、ボディから何かを射出。

 これも鞭か!? うわ、あの形状、EMP兵器っぽい、当たれば一発で死ぬ、アタシはやむ無くエネルギー切れ覚悟で全速後退。

 次に九頭龍が左手から、アルバスに別の武器を射出。ヨーヨーみたいなプラズマ投射機。またこれ系の近接武器!?

 確かに近接戦闘での面制圧力がある武器だろうけど、三本も要らなくないか!?

 いや。

 機体名が九頭龍……。

 四脚タイプ。

 脚と頭部も“九頭”に含まれるのだと仮定しても――いやーな予感がするよ。

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