log07...現在の戦況(記録者:YUKI)

 前回は感じの悪いヤツが対応して悪かったね。

 アタシもアタシで40越えのおばさんだけど、アレよりはマシだと思うから、大目に見てよ。

 アタシの名はYUKIユキ

 HARUTOハルトのチームのテストパイロットだ。

 一応チーム最年長で、このオルタナティブ・コンバットそのもののプレイ歴も一番長い。

 乗機は“アンマークド・グッドプロダクト(略してUMGP)”。さしずめ「銘無き逸品」ってトコかな。

 細かいスペックや武装については、後々、実戦でお見せするよ。

 正直、HARUTOハルトのアルバスやMALIAマリアのアーテルのような面白ギミックやビックリ武器は全く無いから、期待しないように。

 

 さて、アタシ自身久々にチームってヤツに入ったけど。それはひとえに、このHARUTOハルトって言う新参者が非常に面白そうだったからだ。

 先のVRトレーニング、そしてコロッセオでの戦いを見て、その期待は確信に変わった。

 この歳までMMOなんぞやっていると、人間関係のあれやこれやで神経が磨り減って、人間嫌いになっていくコトもある。

 もう、群れまいと思って、ソロプレイのしやすいこのゲームにたどり着いたんだがね。

 アタシにも、いまだ未練がましさってものがあるのか。

 で、まあ。

 新規参入早々、彼らにはハードなお知らせがある。

 アタシらが所属するこのタールベルクの社命は、風前の灯だってコトだ。

 機体制御のコンピュータやパイロット強化などを得意とするタイニー・ソフトウェア社が、いよいよウチの本社を本格的に叩くだろうというタイミングだったのだ。

 前回TERUテルがお伝えしたようだけど、コロッセオでの各企業の戦績が月毎に集計された結果、主戦場への物質支援や僚機NPCの派遣という形でフィードバックされちまうコトが度々起こる。

 今回、アタシらタールベルクは、タイニーとの大事な戦いのいくつかで、そのあおりを喰らってしまったわけさ。

 まあ、タイニー自体も決して弱くはない……と言うか現状、強企業の部類にあった。

 ソフトウェア特化の勢力というと、機体ハードウェアが弱そうに思われがちだけど、とんでもない。

 かなり前に“インパクター”と言う企業を併呑してからというもの、パイロットの強化人間改造手術や脳神経接続システムに手を出したコトで急激に伸びていた。

 ほぼ全社員、文字通り“人間離れ”したポテンシャルのエースパイロットであるから、ブラフマー製の寄せ集めパーツでテキトーに組み立てたSBスペアボディでも、それなり以上の活躍をしちまうってワケ。

 仮に乗機がザクだろうが単なる輸送機だろうが、アムロはアムロってね。

 しかも頭部パーツに至っては、元々パイオニアの分野だ。

 強化人間の超感覚と尖鋭のコンピュータ制御があわさって、特に高機動機体の強さがエグいコトになっている。

 国家という概念が滅びた世界でも、どこが隣接勢力であるかと言うのは、そのまま自陣の寿命を意味する。

 まあ、どうせいつかはぶつかるとは言っても、アタシらは隣接勢力に恵まれなかったってコトでもある。

 

 さて、戦に負けるとどうなるのか?

 結論から言えば、負けた勢力が勝った勢力に吸収される。

 別に敗戦したプレイヤー全員がアバター消去だとか、ゲームから永久追放だとか、そんなコトはない。

 吸収された勢力の下位組織として、これまで通り戦うだけだ。

 例えば、アタシらタールベルク社も、最初はエナジー武器部門しか無かった。どこの勢力も、一つしか得意分野が無かったワケ。

 実体武器開発部門とミサイル部門、そして火器管制システム部門は、他の勢力を滅ぼして併合したモノだった。

 逆もしかりだ。

 仮にアタシらがタイニーに負けた場合、そのノウハウはウチの開発部門に与えられる。

 ウチのKANONカノンとしても、設計の幅が広がるコトだろう。

 まあ、パイロットや開発者が変わらず生き続けるとは言っても、親会社所属と子会社所属では、天下統一後の“上流階級エンド”での待遇に差が出るし、開発の予算も苦しくなるので、最後まで自分達の旗で勝つに越したことはない。

 あと皆、何だかんだ、意地とかプライドで勝ちに行っているのもあるし。

 

 さて、どうしたもんかね。

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