第42話 その後2 ーENDー
王宮舞踏会の会場でおしゃべりを楽しむ、デシルとミラドルのもとに、突然あらわれたサリダは… 実はまだ王立騎士団のお仕事中である。
本来、王宮の警備は王宮騎士団の仕事だが、所属する騎士の人数が少ないため… 社交シーズンの時期だけ、会場の周辺を警備するためサリダたちも応援に来ているのだ。
「サリダ様はまだ、お仕事中でしょう? 僕とおしゃべりをしていたら、騎士団長様に
会いに来てくれたのは、すごく嬉しいけれどね… ただでさえ、僕のために、仕事を休んだり途中で抜け出したり、しているみたいだから、騎士団でひんしゅくを買って、サリダ様が同僚の騎士たちに嫌われたりしていたら、すごく嫌だもの!
サリダの背後に立ちニコニコと微笑んでいる、同僚らしい騎士の目を気にして、デシルはひそひそと耳元で
「今夜は地方から出て来た家族が、この舞踏会に招待されている者が多いから、交代でこちらまで会いに来て良いと、騎士団長が
「へぇ~… そうなんだ?」
「もう、デシルったら! サリダ様が会いに来てくれて嬉しいと、素直に言えば良いのに!」
側でサリダとデシルの会話を聞いていたミラドルが、クスクスと笑い出した。
「もうミラドル! だって、僕はサリダ様の婚約者だから… いけないことは、いけないと… きちんと言えないと、良い妻になれないでしょう?!」
思わずデシルは顔を赤くして、ミラドルに文句を言った。
サリダと“
アルファとオメガの性差のせいで、デシルがそう感じるのかもしれないが…。
「ありがとう、ミラドル嬢! 私もデシルには、もっと素直に甘えて欲しいと思っているのですよ!」
微笑みながらサリダは、ミラドルにパチンッ… と片目を閉じてウインクをする。
「サリダ様まで!」
ぷぅ~と、デシルはふくれる。
「デシルの可愛い顔を見に来たのも、目的の1つだけど… 亡くなった母方の
サリダは嬉しそうにニヤニヤと笑いながら、背後をふり向き、デシルが同僚だと思っていた騎士に向かって名前を呼ぶ。
「え? サリダ様の従兄?!」
「プエルト兄さん、私の婚約者デシルと… デシルの親友のミラドル嬢を紹介するよ!」
「サ… サリダ様の婚約者、デシルです!」
あれ? 会ったことが無い人だ?! サリダ様の親類は婚約式の時に会ったはずなのに? サリダ様より、4,5歳ぐらい年上かな?!
従兄だと聞くと雰囲気がサリダ様と似ている気がする… この人もすごく素敵な人だなぁ~! さすがサリダ様と同じ血筋だね!
「初めまして、エスペラル子爵のプエルトです… 暴れん坊の従弟から、君の話はいろいろ聞いているよ! このサリダを選ぶとは… 君は大変な勇者だね!」
「え?」
暴れん坊? サリダ様が?! 勇者? んんん? どういう意味?
「お久しぶりです、エスペラル子爵様」
ミラドルも椅子から立ち上がり、優雅に挨拶をする。
2人はどうやら初対面ではないらしい。
「ミラドル嬢… 確か、パルケの婚姻の儀で会った時以来だね?」
「はい」
ミラドルは嬉しそうに微笑んだ。
「実はデシル、プエルト兄さんが休暇をゆずってくれたから、私は多めに休むことが出来ているんだ… もちろん、いつか借りは返す予定だけどね」
「えええ?! サリダ様の休暇?! わあっ… そうなんですか?! ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした、プエルト様!」
ああ、だから僕たちの婚約式でプエルト様に会わなかったのかな?! サリダ様に休暇をゆずったせいで、あの日はお仕事してたから?! うわっ!! 僕たちは何て、ご迷惑をかけているんだ?!
あわててデシルが、ペコペコと頭を下げると… プエルトは困った顔をする。
「いや、良いんだよ… デシル君! 私は君たちのように、相手がいない独身者だから! 今のうちにサリダに恩を売っておくのも良いと思っただけなんだ!」
大したことはないと、手を振るプエルトに…
「ええ―――っ?! でも… 確か婚約者がいらしたのでは…?」
なぜか驚くミラドル。
「これは参ったな! そうか… ミラドル嬢は私の婚約者に、パルケの婚姻の儀で会っていたね?」
気まずそうに、プエルトは頭をぽりぽりとかく。
「…はい」
「プエルト兄さんの婚約者も、略奪婚を決行されたんだよ」
サリダがプエルトの代わりに、疑問に答えた。
「ええええぇっ?!」
「嘘おぉぉぉっ?!」
デシルとミラドルが同時に小さなさけび声をあげる。
「私と彼は少し年が離れていたし、政略的な婚約だったから… 彼は私との結婚に、抵抗を感じていたのだと思う」
プエルトの婚約者は、なんとデシルやミラドルが卒業した、王立学園の1年後輩で… フリオとアオラが
「何てもったいない……」
瞳をキラリと光らせて、ぽつりとミラドルがつぶやいた。
それもそのはずで、エスペラル子爵プエルトは… 王立騎士団の現副団長の任に
逃げ出した恋人達と…
裏切られた婚約者たち…
いったいどちらが、真実の愛と幸せを、つかむことが出来るのだろうか?
ー END ー
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
表現不足が多々ありますが、最後までお付き合い下さり感謝感激です(^^)/
また、どこかでお会い出来れば、幸いです☆彡
恋人たちの婚約者たち 金剛@キット @GatuGatu
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