第8話 魔王復活の噂

王都クリミア城


玉座の前で騎士隊長ワットはひざまずき、エリル王に報告をしていた。


「それで、実際はどうだったのだ。」


「猫族の女の子でした。見たところ魔力もあまりなさそうです。勇者かどうかは正直よく解りません。」


「そうか。ご苦労だった。しばらく様子見をしていてくれ。」


「承知いたしました。」



****



部屋を退出した後。

広い廊下を歩いていた。

「はぁ~。」

何だか面倒なことになってきたな。

様子見ってどの位・・どんな間隔ですればいいのか。

そもそも話すことも無いしな。


「剣を振ってる方が気楽だよ‥。」

ワットは呟くのだった。


「いっそ部下に任せようか‥でもなぁ。」

勇者の事は極秘っぽいし無理か。

「はぁ~~。」

ワットは長いため息をつくのだった。



****



冒険者ギルドでは最近妙な噂が流れていた。

「魔王が復活した!って本当のところどうなのよ?」

ひそひそ・・

噂が本当なのか今のところよくわからない。


最近っていえば、シオリが勇者かも?って疑われたことかな。

何だか物騒ぶっそうだなぁ。


今は領主様のところで安全な仕事してるけど‥この先どうなるか分からないな。


「ねえ、ねえ。」

シオリがぼくのそでを引っ張った。


「今日は報酬ほうしゅうのお金をもらいに来たんだよね?」


そうだった。

あれから一週間ぼくたちは領主のところに通っている。

ひとまず、お金がもらえるので受け取りに来たのだ。


「安い宿を探さないとな。」


「え~あそこ引っ越すの?」

珍しくシオリが文句を言ってきた。


「流石に毎日暮らすとこは安宿じゃないと‥もしくは家賃払って借りるかしないとだし。」


「そうだよね・・。」


いつかはモンスター退治とかしないといけなくなるか?

頭を横に振る。

まだ大丈夫、多分。


ひとまず金貨20枚を受け取り、食堂を探す。

「今日はどこで食べようか。」



****



「おっそーい。」


「ごめんごめん‥。」

シオリは謝る。


ぼくたちは気に入られ、特にシオリだが‥毎日アドルの部屋に通っている。

何をするでもない。

ただ一緒にいて遊ぶだけ。


昨日は、王都で流行っているというトランプをやってみた。

これが中々難しい。

今日は何をしようか?

考えていたら、ドアがノックされた。


「フォレス様、シオリ様、エドワード様がお呼びです。」

家政婦が声をかけた。


「じゃあ、行ってくるね。」


「早く帰って来いよ。」


本当になつかれたな。


ぼくたちはリビングに通される。


「実は折り入って頼みがあってね、アドルとも大分仲が良いようだし、一緒に暮らしてはどうだろうか?食費とか諸々はこちら負担で。お金は今まで通り払うし、悪い話ではないと思うのだが。」


「アドルには家庭教師を付けたいと思っていてね、一緒に勉強してもらって構わないし、できれば半年はいてほしいのだが。」


わぁ好条件!

お金貰えて、無料で住めるとか勉強?も教われるとかありえない。

う~ん。

ぼくは悩んでいると‥。

「良いんじゃない。ご飯食べれるし、住む家とりあえずあるし‥決めちゃおうよ。」


「実は息子からも、せがまれてね。シオリさんだけでも‥。」

「ぼくも一緒に来ます。やらせてください。」


とっさに答えてしまった。

放っておくと、シオリだけがここに来るようになりそうだったから。

そんなのものすごく嫌だ。


かくてぼくたちは屋敷に住まわせてもらうようになった。

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