ぼくと猫耳少女の異世界スローライフ

月城 夕実

第1話 猫耳の少女

「ようやく雨が止んだか。」


ぼくは森にまきを取りに行っていた。

雨の後の森は湿気が凄い。

本当は乾燥しているのが良いんだろうけど。

地面がぬかるんでいる。


ぐにゃ

何かを踏んだような…。


「え?」


人が倒れている!

何で気が付かなかったのだろう。

ぼくは慌てて、その人を見てみた。

子供?


ぼくもまだ子供だけど。

しかも女の子みたいなんだけど・・。

運べるかな…。

ぼくは小さい女の子を背負って家のベッドに寝かせた。


「家が近くで良かったよ‥。」


ぼくの名前はフォレス15歳。

茶色の髪とくすんだ灰色の瞳。

いたって平凡な容姿だ。

両親は亡くなって久しい。

近所の村人に助けられながら暮らしている。


「‥ん。」


あ、気が付いたみたい。

ぼくは運んできた少女をベッドに寝かせていた。

目をぱちくりさせている。


「ここは‥どこ‥?」


少女は言葉を発した。

漆黒の黒い髪と焦げ茶色の瞳。

真ん丸な瞳が可愛らしい。

起きたてで目がとろんとしている。

妹がいたらこんな感じだろうか。


「ここは、イリエ村だよ。君は森に倒れていたんだ。」


「…?聞いたことない。森?」


少女はおどおどしている。


「私の住んでいたところに森は無かったはず。都会だったから・・。」


「確か、家に帰る途中だったはず…?」


「夢ではないようだけど‥。」

ぽつぽつと独り言を言っている。


少女はふと頭に手をやった。

猫耳をさわっている。


「君、猫族だよね?」


「にゃあああ〜?」


あれ?また寝ちゃった。



*****



「ご飯作ってみたんだけど、どうかな?」


ぼくは少女にスープを差し出した。

薄い茶色のスープ、具材はほどんと入っていないものだ。

少女は受けとり、スプーンですくって飲み始めた


「味が薄い…。」


少し落ち着いたみたいだ。

「ぼくの名前はフォレス、ここに一人で住んでる。」


「君の名前聞いてもいい?」


ぼくは少女の目を見ながら言った。

「私は枝葉えだは しおり、です。」


シオリか。

「どうしてあそこに倒れていたのか覚えている?」


「わからない‥それにここは知らない場所みたいだし・・。」


もっと聞きたかったが、色々あるみたいだし言えないことがあるのかもしれない。

ぼくはそっとしておくことにした。


「しばらく休んでいくと良いよ。体調も悪いみたいだし。」


「ここに住まわせてもらえませんか?何でもしますから!」

ぼくは突然の提案に驚いた。


「‥住んでもいいよ‥ぼく一人しか住んでないし。家事とかやってくれると助かるかな。」


彼女の提案でシオリとの同居生活が始まった。







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