第7話:暴走族の総長。

「ねえ、お兄さん、連絡先教えて・・・時々ラブメールするから」


「お、いいよ」


「聖子・・・」


「いいから・・・詩織は邪魔しない」


「あ、お兄さん・・・なんて呼べば?」


「​シュウちゃんで」


「了解、シュウちゃん」


「じゃ、あんたは聖子で・・・」


聖子は柊一郎にピースサインをして愛想笑いした。

このふたりの場合は気があうようで昔からの知り合いみたいだった。


この軽いノリはお互い気が合ってるんじゃないかって詩織は思った。


「シュウちゃんて、ほんとの名前なんて言うの? 」


「吉岡 柊一郎」


詩織がそう言うと


「よしおか・・・ん~、よしおか?・・・よしおかね・・・え?まてよ・・・

よしおか、しゅういちろうって・・・聞いたことあるような・・・」


「吉岡?・・・、うそ?もしかして、あのよしおか?」

「あの、しゅういちろう?」

「それとも同姓同名?」


「なになに・・・名前がどうかしたの?、聖子」


「聞いたことある、先輩から・・・昔、暴走族にすごい人がいたって」

「その人の名前が、お兄さんと同じ吉岡 柊一郎・・・」

「ね、お兄さん昔、暴走族やってたでしょ?」


「・・・・・・」


柊一郎は無言で、違うほうを向いていた。


「詩織は聞いたことない?・・・昔、ルシファーって暴走族いたの」


「知らないけど・・・暴走族って・・・いつの時代の話?」


「あんた、知らないの?」


「知らない・・・」


「まあ、あんたとは違う世界に線出る人達だもんね」

「詩織・・・このお兄さん、たぶん元暴走族の総長だった人だよ」


「うそ・・・」


「ね、そうでしょ」


「さ〜ね、他人の空似・・・ってやつじゃね〜の?」


「間違いないって」


「聖子、シュウちゃんのこと知ってるの?」


「あんたのお母さん、結婚相手の家庭とか素行とか調べなかったの?」


「分かんない・・・」


「まあ、その暴走族がもし、俺だったとして・・・なにか問題でも?」

「昔のことだろ・・・」


「そだね、昔の話だもんね」


「誰だって隠しておきたいことあるしね」


聖子は昔の柊一郎の話は、詩織の前ではこれ以上しないほうがいいと思った。


「そういう意味で言ったんじゃなくて・・・」

「別に隠すつもりはないさ・・・あんたの言う通りだよ」

「でも、もう昔のことだし・・・今は真面目に働いてるぜ」

「って言うか・・・俺、今、詩織から3メートル以内に入ってるけど・・・」


「あっ・・・」

「もういいです・・・5メートルに延長します」


「なにそれ?」


「だから・・・もういいの」


詩織は柊一郎が暴走族だった話がすぐには信じられなかったが、

柊一郎に自分の知らない過去があることに、とても興味を持った。


つづく。

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