第9話 R18展開……かもよWW
その後、大広間で大勢の人を呼び、晩餐会が開かれた。言っておく、宇宙戦争中だ。何やってんのよ。
とは言え、私とヒュロシ王子の結婚を祝うための晩餐会だから、文句は言えないわね。
私は壇上の席に座らさせられた。ヘーラクレレス王とディアネイラ王妃を挟んでヒュロシ王子とは反対側。ディアネイラ王妃の隣……なんで?
ていうか、どうして食事の時までヒュロシ王子はマスクをしているのだろう。ヘルメットも被ったまま。
王様夫妻越しにチラチラとヒュロシ王子を伺っていると、私の前の男がお酒のグラスを傾けながら言った。
「結婚式までは、自分が生んだ転生者には顔を見せてはいけないのだとよ。あーあ、面倒くせえ……」
私の前には長い机が部屋の奥まで続けて並べられている。私に話し掛けた私側の列の先頭の席の人は、ヒュロシ王子の腹違いの弟さんたちの一番上の方、たしか、グテーシッポとかいう人だ。随分とだらしない格好で、他の人の服装とは全く違う。日本の和装のような着物を、ゆるーく、だらしなーく着ている。きっと、本人もそういう人なのだろう。椅子にもたれたまま
その次の席は、さっきのワル弟のグレーテマス。この世界でもワルは紫のシャツを着るのね。あと、不必要なネックレス。何処の世界も同じみたい。
その隣がオネエキャラのオネイテマスさん。今度は銀色のスパンコールのドレスを着ている。アフロヘアーは沢山の飾りで七夕の笹飾りのようになっている。
その隣がマッカリアスちゃん。やっぱり深紅のドレスなのね。髪は奇麗にまとめている。
イオラオサンのおっさんは、グテーシッポさんの向かいの席に座って、私に目配せしてくれている。
料理は見たことがない物ばかりだけど、どれも美味しかった。隣の席から将来のお姑さんが訊いてくる。
「今夜の食事はね、あの美食研究家のユーディース氏がプロデュースしたものなのよ。お口に合いまして?」
「はい。とても美味しいです」
「あらー。第七界から来たイオリさんでも、味の善し悪しがお分かりなられるのかしら。そんなに無理しなくてもよろしくてよ。ホホホホ」
私は愛想笑いで返した。それを見てグレーテマスが「ケケケ」と笑う。
これはいわゆる「嫁いびり」なのかしら。でも、私は平気。だって、このくらいのこと、肛門を通過する事に比べたら屁でもないわ。ふふ。
私は笑顔でギズモポークのバジルチーズ添えをいただいちゃった。美味しい。
「ガハハハハッ! 今日の酒は特別に美味いな。料理も美味い! これは、今夜の結婚式が楽しみだな、息子よ! ガハハハハ」
「御父上、少し飲み過ぎでは」
ヒュロシ王子が心配そうな顔でヘーラクレレス王に言っている。
「何を言うか、これくらい。ヒュロシよ、これからはおまえの時代だ。よいか、他の
長机の他の
そのイオラオサンを見るふりをして、私はヒュロシ王子を見ていた。彼はこっそりと何かの薬をマスクの下に運び、それを飲んでいた。その瓶には男性性器の絵が描いてあるのが見えてしまった。あれはきっと精力剤に違いない。もう、ヒュロシ様ったら♡
私は目の前に並べられている料理の中から精が付きそうな物を選んで口に入れていった。
※※※※
その日の夜、『入水の儀』ならぬ『入湯の儀』は執り行われた。私とヒュロシ王子の正式な結婚式だ。
全身を白いケープで覆った私は、同じく白い服を着たアルクメーデーを従えて、廊下に並んで立つ兄弟たちやヘーラクレレス王夫妻の前をゆっくりと歩いていった。
式場の扉の前に立つと、背後からアルクメーデーがそっと伝えた。
「この扉の向こうが『入水の間』です。ヒュロシ王子様は中でお待ちです。中に入られたらケープを外して、ありのままの姿で……ぶしゅっ!」
アルクメーデーが鼻血を噴いて倒れた。他の眷属かメイドらしき人たちが駆け寄り、彼女を担いで去っていく。
私は意を決して、ドアを開けた。
どこからともなく鐘の音が響く。夜なのに。
中ではヒュロシ王子が鎧もマントも外した姿で立っていた。包帯ぐるぐる巻きで全身を覆っているし、ヘルメットもマスクも付けているけど……。
「お湯の温度は、これくらいでよかったのかな」
私は畳三畳ほどの広さのバスタブのような物に溜められたお湯に手を入れた。
うん、ちょうどいい。
私は静かに頷いて、ケープの紐に手をかけた。ヒュロシ王子が生唾を飲む音が室内に響く。
私はゆっくりと紐を引いた。首元で結ばれていた紐が解け、まっすぐに伸びる。ヒュロシ王子が手を伸ばしてきた。震える指で私の肩に乗っているケープの端を掴む。息も荒い。そして、そのまま優しくケープを私の肩から離した。王子が手を放すと、ケープはするりと床に落ちる。私は恥ずかしさのあまり両目を強く瞑った。だって、私は、短パンとTシャツ姿だから。こんな場違いな格好、恥ずかしい!
ヒュロシ王子はヘルメットごと項垂れると、肩を落とした。私は言ってあげる。
「背中を流して差し上げますわ。この椅子にお座りになって下さい」
「流す? こうすればいいのかな」
ヒュロシ王子は私に背を向けて小さな腰掛に座った。私は彼から包帯を外していった。筋肉質な彼の肉体が徐々に露わになる。傷だらけの体を想像していたが、傷はほとんど消えていて、肌も赤子のように綺麗だ。この星の科学技術、すげえ!
私は準備してもらったタオルに完全洗浄剤『アマクニン』を付けて泡立てた。ものすごく泡が立つ。不思議だけど、泡の中からドゥルルルルという音がする。不思議な洗剤だ。私はそれでヒュロシ王子の背中をゴシゴシと洗った。
「気持ちいいですか?」
「う、うん」
桶に汲んだお湯をヒュロシ王子の肩から背に流すと、今度は手に最高級『ニワトリン・シャンプー』をとり、泡立てた。こちらもよく泡立つ。必要以上かもしれない。ただ気になるのは、容器にオカメの絵が描いてある事だ。少し不安だったが、私もさっき使って大丈夫だったので、たぶん大丈夫なのだろう。
私は背後からヒュロシ王子の耳もとで
「髪も洗って差し上げますわ。ヘルメットをお取りになって」
ヒュロシ王子がヘルメットを外した。中から綺麗なブロンドの髪が現れる。続いて、彼はマスクも外した。さあ、その顔は……
イケメン!
ちょっと待て。この場で腰が抜けそうなくらいイケメンだ。目はぱっちりとして切れ長の眉、鼻筋は通っているし、頬もシュッとしている。唇はぷにぷにと柔らかそうで、でも分厚過ぎない。顎の輪郭も均整がとれている。歯を食いしばった時に浮かぶ、顎の角の筋肉の筋がいい! これはたまらん!
私は発狂状態でヒュロシ王子の髪を洗った。その時何回ヒュロシ、ヒュロシと叫んでいたか、後々ヒュロシ様に何度も言われたが、私は全く覚えていない。嬉しさのあまり、すべての記憶がとんでいるのだ。この後に自分から服を脱いで、一緒に入浴したことも、その後の事も。
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