第10話(4)トリニティアタック発動

「危険度がSに上昇!」


 通信が夜塚たちの下に入る。


「ブエアアアン‼」


 巨大な影が咆哮する。夜塚が周囲に声をかける。


「みんな、回避行動を……⁉」


「そういうわけにはいきません!」


 雪が力強く答える。


「そうなったらこないだの二の舞だ!」


 慶が声を上げる。


「ここは先手必勝だ!」


 蘭が叫び、隊員たちが前に進み出る。


「! ふっ、これが若さってやつか……」


 夜塚が笑みを浮かべる。


「年寄り臭いこと言うな、巻き込まれる……」


「えっ⁉」


「一緒にしないでもらえます?」


「ええっ⁉」


 三丸と深海のつれない態度に夜塚が驚く。


「行くぞ、志波田隊員!」


「いつでもいいぜ!」


 葉の呼びかけに蘭が応える。


「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」


「おらあっ!」


「ブエアン!」


「『鬼神之雷』!」


 深海が声を上げる。


「先制攻撃が決まったな!」


 三丸が拳を握る。


「ブ、ブエア……」


 巨大な影がややよろめく。


「どうだ⁉」


 葉が様子を伺う。


「ブ、ブエアン!」


 巨大な影が体勢をすぐに立て直す。


「ちっ、まだ動けるのかよ!」


 蘭が舌打ちする。


「それならば……星野隊員!」


 花が月に声をかける。


「ええ! 準備はいいわ!」


 月がカメラを設置する。


「お願いします!」


「ええい!」


 月が目一杯跳躍し、巨大な影を見下ろす位置にまで到達する。


「竜!」


「映像を確認! 頭部が弱点の可能性は高いと思われる!」


 花の呼びかけに竜がすぐさま答える。


「星野隊員! 頭部を集中的に狙ってください!」


「了解!」


 花の指示に従い、月が弓矢を連射する。


「ブエアン‼」


 月の射った矢を頭部などに食らい、巨大な影は再びよろめく。


「『空之双眼』による的確な攻撃! 効いたか⁉」


 三丸が声を上げる。


「ブ、ブエアン‼」


「ま、まだです!」


 巨大な影が体勢を立て直そうとしていることに深海は額を抑える。


「しかし……効いてないはずはない……古前田隊員!」


「ああ!」


 雪の呼びかけに慶が応じる。


「心臓あたりならば効くはずです! お願いします!」


「突くのは得意中の得意だぜ!」


 雪が手を掲げると、慶が巨大な影の懐に一瞬で飛び込み、胸部あたりを槍で突く。


「ブエアン⁉」


 巨大な影は後ろに大きくよろめく。


「『魔槍突撃』! 強烈な一撃!」


「一旦戻れ! 古前田隊員!」


 声を上げる深海の横で三丸がすかさず指示を出す。


「あらよっと!」


 慶が元の位置に戻る。


「ブ、ブエアン⁉」


「ちいっ! 突きが浅かったか⁉」


 体勢を立て直す巨大な影を見て、慶は大きく舌打ちする。


「な、なんでやつだ……」


「陸人っち! ビビったら負けだよ!」


「今度は我々が!」


 大海と天空、そして陸人が前に進み出る。夜塚が声を上げる。


「ちょっと待った! これを受け取って……」


「こ、これは……ブレスレット?」


「三人とも着けて!」


「は、はい!」


 三人は新たなブレスレットを着ける。


「よし……これまたぶっつけだが、三人に賭ける! 手をかざせ!」


 大海たちが手をかざす。三人を同じ色の光が包む。


「! こ、これは……?」


 陸人が戸惑う。夜塚が深海に問う。


「どうかな、破竹⁉」


「……共振率は極めて高いようです」


「よし! イケるね!」


 夜塚が頷く。陸人が頭を抑える。


「なんだ……これイメージが共有できる感じだ……」


「よっしゃ! この思い浮かんだ感じで行こうか!」


「ええっ!」


 大海と天空が突っ込み、陸人が銃弾を放つ。大海たちの体と銃弾を眩い光のが包み込み、大きな光の塊になる。


「うおおおおっ!」


「ブ、ブエアアン⁉」


 光の塊に貫かれ、巨大な影は霧消する。


「やった! 決まった!」


 夜塚が派手なガッツポーズをとる。大海が問う。


「い、今のは……?」


「ツインアタックのアップデート版、『トリニティアタック』さ!」


「ト、トリニティアタック……?」


「そう! あえて名を付けるならば……」


「『真剣拳波』だね!」


「あ! 先を越された! ま、まあ、いいよ、それで……」


 天空に先を越され、夜塚は不承不承ながらも頷く。


「ネーミングはともかくとして……トリニティアタックか……強力だな……」


 三丸が腕を組む。

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