第46話 PHASE5 その2 貞操の危機?

「冬馬君とは、ご飯食べながらしか喋ってなかったから、

ゆっくり話をしたかったんだぁ」

「それなら普通に誘えばよかったのに。何でこんな回りくどい事を……」

「やっぱり冬馬君って、弟みたいで可愛いもん♡揶揄ってみたかっただけ」

夏子も大概だが、朱美さんの行動パターンがわからなくなってきた。

わかってきたつもりだったんだがなぁ。


「それも男としてどうかと思いますけど。

何で朱美さんって俺の事、気に入っているんですか?」

ここぞとばかり、初めて会った時から高評価だった疑問について

聞いてみる事にした。


「冬馬君と出会う前のなっちゃんは、塞ぎ込みがちというか、

輝きがなかったのよね。高校の時は普通に元気で明るかったのに、

いつからか元気がなくなっていって。絶対何かあったと思うのに、

誰にも本当の事を話してくれなかったのね」

「それ本当ですか?いつでも元気で明るいイメージだったのに」

冬馬は初めて合コンで声をかけてくれた夏子の事を思い出していた。

確かに高校時代に嫌な事あったと言っていたが、

それをずっと引きずっていたのだろうか?


「それが冬馬君と会ってから明らかに変わったわね。

何よりお父さんとやり合うぐらいになるなんて思わなかった。

プチ家出までしたりして」

「それは自分にとっても予想外でしたね。随分悩んでいたみたいでした」

「家出している時も◯インで連絡取り合っていたけど、

冬馬君の話ばかりだったよ。で、この人なら信頼出来るかなって思ったよ」

成程、夏子が裏でそんな話をしていたのか。何だかこそばゆい感じだ。


「そんな、褒められるような事してないですよ」

「夏子の為に一緒に来てお父さんを説得するって聞いた時は、

やるじゃんと思ったよ。邪魔にならないようにわざとデートの約束入れて

出かけたけど、まさかお父さんと晩御飯一緒に食べてたとは予想外だったよ」

何となく朱美さんの好感度が高かったのはわかった気がする。

でもお母さんの好感度が高いのは何でだろう?


「俺、お母さんに気に入られているのが何でなのかわからないんですけど」

「お母さんは基本的に常識をわきまえていれば大丈夫だよ

なっちゃんがイキイキしてきた時点で気に入ってたみたいよ」

「さいですか」

「でも冬馬君は真面目過ぎるきらいがあるからね、

もう少しはっちゃけた方がいいと思うよ。女性との接し方、ちゃんと覚えたら

もっと魅力的になるんじゃないかな?」

朱美さんにも石塚さんみたいな事言われてしまった。

俺は一体、どうすればいいのだろうか?


「どうすればいいかわからないんですよね。夏子と出会う前は、

女性とまともに接した事、なかったですし」

「じゃあ、私と練習してみる?ちょっとした火遊び……」

朱美さんの目が妖しく光って見えたのは気のせいだろうか?


「火遊び……。悪い大人ですね、朱美さん」

「そう?こんな大人にならないようにね、冬馬君」

そして朱美さんは冬馬の手を取ると自分の胸に押し付けた。

朱美のそれは服の上からでも大きさがよくわかった。

そして、その柔らかさを強く感じられた。

朱美さんはそのまま冬馬の手を掴むと、スカートの中に入れ、

秘密の部分へと導く。気のせいか、そこは既に湿り気を帯びていた。

ダメだ、これ以上されたら、もう後戻り出来なくなってしまう。

冬馬に緊張感が走り、胸の鼓動が早くなっていく……。


「ちょっと朱美さん、度が過ぎてますよ」

さすがにこれ以上はマズいと思い、朱美さんの手を払いのけた。

しかし、朱美さんは不敵に微笑みながら再び冬馬の手を掴むともう一度、

自分の胸に押し当てた。そして耳元で囁くように言うのだ。

その囁きが、さらに冬馬を混乱させる。


今度は朱美さんが、まるでベリーダンスでも踊るかのように腰を動かし始めた。

その仕草はいやらしくもあり、どこか妖艶な雰囲気を漂わせているように感じた。

そんな様子に、思わず生唾を飲み込む冬馬。

その様子を見て楽しそうに微笑む朱美さん。


「ね?この後どうするの?」

「俺は……」



ドンドンドン!!



突然、ドアを強く叩く音が響いた。

「お姉ちゃん、冬馬くんと一緒にいるんでしょ?鍵閉めて何してるのよ!」

丁度いいタイミングというか、夏子が買い物から帰ってきたようだ。


「あら残念。火遊びはお終いね♡」

冬馬は、ほっとしたような残念に感じるような複雑な気持ちになっていた。

この気持ち、一体どうすればいいんだろうか?


朱美は部屋のドアを開け、夏子を招き入れた。

夏子の表情が凄い事になってる。直視出来ない程に。


「冬馬くん、お姉ちゃんに襲われてない?貞操は大丈夫?」

「だ、大丈夫だよ」

冬馬は、呆気にとられた顔で返事をする。貞操って……。


「お姉ちゃん、最後に言い残すことはない?」

「アア、トウマクントモットらぶらぶシタカッタ」

「ほんとにもう。冬馬くんには手を出さないでよね。

冬馬くん、どうもされてないよね?」

「うん、柔らかかった……」

「お姉ちゃん、冬馬くんに何したのよ~」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る