PHASE2
第14話 PHASE2 その1 ぽっかりと空いた隙間
休日が終わり、出勤する日になった。
今日は朝からやらなければならない作業があり、その後は社内で事務作業だ。
(やっぱり週初めは忙しいか。テキパキとやらないとなぁ)
冬馬は気持ちを切り替えて仕事に没頭しようとする。
(仕事中は夏子の事は考えないようにしないとな)
いつものように仕事をこなしていると、昼休憩の時間になった。
社員食堂に行き、昼食を摂ることにする。
普段は一人で静かに食事をするのだが、今日は何か寂しい気がした。
(こりゃ重症かもな。 )
冬馬はそう思いつつ、予約してある弁当を持ってくる。
それからスマホを取り出し、夏子から送られてきた画像を見る。
一緒に写ろうと半ば強引に撮らされた1枚。
自分は呆気にとられた様な表情をしていたが、夏子は素敵すぎる笑顔だった。
連絡先を交換した際に◯インの友達登録もしてもらった。
◯インなんて、確定申告の会場予約に必須だったから
無理矢理アカウントを作っただけで、普段は使用していない。
まさか異性とのやり取りをする事になるとは夢にも思わなかった。
(やっぱり男の方から連絡した方がいいのかなぁ? )
夏子からのお礼とこの画像が送られて以来、やり取りはしていなかった。
何でも向こうで立て込んでいるようで、落ち着いたら連絡をするとの事だった。
「ふう」
思わずため息が漏れる。 自分も彼女が出来た事がないので、
どういう風に接すればいいのか分からない部分がある。
なのでこちらからアクションを起こすのは難しいのだが……。
と悩んでいるうちに弁当を食べ終わった。
(まぁ、考えるのは後にしよう)
そして休憩後、そのまま仕事に没頭していったのだった。
仕事に集中してから、あっという間に夕方になった。
終業時間になり、社員たちは帰宅準備を始める。
冬馬もそれにならって帰り支度を始めた。
(今日は何を作ろうかな? )
と考えながら帰宅する。 いつものスーパーに寄って食材を探した。
(今日は焼きそばでも作ろうかな。 )
安く手に入る茹で麺と、割引になっていたカット野菜セット、
半額になっていたけど比較的鮮度のいい、豚の小間切れを買った。
他にも朝食用の3連パックの豆腐や納豆も補充する。
冬馬は食事は安く済ませるようにしているが、
栄養が偏らないようにも気をつけている。
自炊する事でコストを抑えるだけでなく、節約にもつながる。
自宅に帰り、早速調理を始める。
まずは豚小間切れのパックを開けて、フライパンで焼き色をつける。
ある程度火が通ったら皿に取り出し、野菜を切っていく。
買ってきたものに加えて冷蔵庫にあった、
やや鮮度が落ちてきたキャベツや玉ねぎ、人参を取り出す。
キャベツと玉ねぎは、ざく切りにし、人参も千切りにする。
豚肉と野菜を加えて軽く炒め、更に茹で麺を入れる。
仕上げにお気に入りの、◯たふくソースの焼きそばソースを入れ、
サッと炒めたら特製焼きそばの出来上がり。
「いただきます」
冬馬は手を合わせてから、食事を始めた。
我ながら上手くできたと思う。 味付けも好みのものだし、
何より野菜が沢山入っているので栄養バランスもいいはずだ。
食後は洗い物を済ませてからシャワーを浴びた。
本来ならブログを書いたり、好きな音楽を聴いたり、
スマホゲームを楽しむのだが、夏子がいないと物足りなく感じていた。
◯インを確認してみたが、何もなかった。
「やっぱり寂しいな」
ポツリと呟く。 声が部屋に響き、虚しさが増した気がした。
結局、ブログもスマホゲームも触らずにベッドに入った。
CDを聴きつつ、ぼんやりと天井を見つめながら
考えるのは彼女の事ばかりである。
(今頃何をしているんだろう? )
もしかして男と一緒にいるのではないか?
一瞬そんな考えが脳裏をよぎったが、すぐさま振り払う。
彼女はそんな事をするような子ではない、と信じたかった。
また夏子のことを考えてしまっている自分に苦笑する。
恋愛経験のない冬馬はこういう風に相手を想い続ける気持ちを知らなかった。
あの異常な高揚感が自分の中で大きくなっていることに気がつくこともないまま、
冬馬は眠りについたのだった……。
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