第13話 PHASE1 その9 しばしの別れ。でも次も……

気がついたら、もう窓から朝の光が差していた。 午前7時を過ぎていた。


昨日、あれだけ抱き合ったのだけれど、不思議と疲れは溜まっていなかった。


(朝ご飯でも作るかな。 )


冬馬は、休日に食べる朝食を用意し始めた。


夏子が気に入ってくれた、カレー風味のトーストに拘りのアイスコーヒー、


半熟の目玉焼きに昨日買ったベーコンを焼いてみる。


用意しているうちに、夏子も起きてきたようだった。




「おはよぉ、冬馬くん」


と言って、後ろから抱きついてくる夏子。


「おはよう。もう出来るから座って待っててよ。」


と言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで離れていった。


食卓の上には美味しそうな朝食が並ぶ。 早速、二人は食べ始めた。


食事を終えると、食器を片付けて掃除を始める。


(掃除って面倒くさいけど、夏子と一緒なら苦にならないな。何でだろ?)




「冬馬くん、今日何か予定ある?」


「いや、特に無いけど」


と答えると、夏子は嬉しそうに微笑んだ。 そして抱きついてくる。


「じゃあさ、買い物しようよ!ちょっと時間をかけてじっくり服とか選びたいな。」




(女の子って買い物好きだよな。でも女の子と出掛ける事、


あんまりないんだけどなぁ。どうしよ?)


冬馬は少し不安になったけど、夏子と一緒なら何でも楽しいんじゃないか、


と思うようにした。まぁどうにかなるだろうと思う事にして出かける準備をした。


いつの間にか夏子も準備が出来ているようだった。


それ程お化粧もしていないようだが、大丈夫だろうか?




「用意出来た?出かけよう!」


と、夏子は冬馬の手を引いて歩き出した。 冬馬は何も逆らえず、


夏子に引っ張られるようにしてついていく。


もう尻にひかれてるんですけど…。でも決して悪い気はしないんだよなぁ。




二人は少し遠征して、賑やかな街中へと出かけていった。


まずは服屋に行き、夏子の新しい服をコーディネートしてみる。


もちろん、冬馬にはこんな経験などないのだが…。


それでも夏子は、どれも気に入ってくれたようで次々と試着していった。


「いいセンスしていると思うよ。もっと自信を持って。」


そして最終的に、2セットの服を買うことになった。


(女の子の服って、ホント、種類が多いよなぁ。


選ぶのに時間がかかるの、わかる気がしたよ。)





服を選ぶのに、思っていた以上に時間がかかってしまった。


もうすっかり昼食を食べる時間は過ぎていたが、


流石にお腹も減って来たので、昼食を食べる事にした。


冬馬一人なら、牛丼とかでも食べるだろうが、


夏子を連れて入るのは流石にどうよって思う。


ここは夏子が食べたい所に連れて行くのが無難だろう。


「夏子、何か食べたいものある?」


夏子はパスタを食べたいと言うので、イタリアンのお店に入った。


普段はまず入る事のないような店なので、冬馬にとっては敷居が高い。


うん、やっぱり落ち着かない。夏子には言えなかったけど…。


「へぇ、結構お洒落な店だね。料理も楽しみ♡」


混んでいる時間帯は過ぎていたので、待ち時間なしで入れたのは


ラッキーだった。


「メニューは?これ、食べたことないけど、美味しそう。」


夏子は冷製カッペリーニなるものを注文した。冬馬は無難にランチセットを…。


注文を済ませると、料理が来るまでの間、雑談をする事になった。


話題は自然とアレの話になる。どうしてこうなった?




彼女は昨日の事を思い出しながら話しているようだった。


俺は恥ずかしくなって赤面してしまう。


「他人がいる所でする話じゃないだろ。」


「いいじゃない、個室だから私達しかいないんだし。」


と夏子は笑う。いやいや、そういう問題じゃないでしょう。


そして冬馬の耳元で囁いた。


「ねぇ、またしようね」と。


冬馬は顔が熱くなるのを感じたが、小さく頷いた。






食事を終えて店を出ると、またショッピングをすることになった。


夏子が欲しい物があるらしいのだ。


「あれ、見たいな」


と言って、夏子は何かを見ていた。 それはアクセサリーのお店だった。


彼女はピアスを見ているようだ。




「何見てるんだ?」


と聞くと、夏子は答える。


「これ可愛いなぁって思って」


と、手に取ったピアスを見せてきた。


それは綺麗な宝石が付いていて、値段もそこそこ高そうだった。


「買ってやろうか?」と聞くと、彼女は首を横に振る。


「自分で買うよ」と言って、彼女はレジの方へ向かっていった。


しばらくして戻ってきた夏子の手に握られていたのは小さな紙袋だった。




結局、買い物と食事だけで時間が過ぎてしまい、気づけば夕方になっていた。


これじゃ、買い物に付き合っただけでデートって言えるほどじゃないよな。


まぁ冬馬には、夏子をエスコートする自信なんてなかったけれども。


「そろそろ帰ろうか」


と言うと、夏子は寂しそうな表情を浮かべる。


「もう少し一緒にいたいなぁ。ダメ?」


と呟く彼女に、冬馬はキスをした。 殆ど無意識にだった。




すると彼女は嬉しそうな表情を浮かべ、抱きついてくる。


「流石に今日は帰らないとダメだろ。自分も明日からは仕事だし。」


「うん、そうだよね。…わかった、そろそろ帰ろっか。」


と寂しそうに言う夏子と一緒に、二人は帰路についた。


帰り道の途中でコンビニに寄って


飲み物を買ったりしながらゆっくり歩く。


それでも別れの時間は刻一刻と近づいてきた。


そして家の前まで着いたところで、夏子が口を開いた。




「ねえ、冬馬くん」


「ん?」


「また会いたいな。 本当は離れたくない。 まだ出会ったばかりなのに、


こんな気持ち初めてなの。」


夏子の目には涙が溢れていて、今にも零れ落ちそうだった。


「うん、自分も同じ気持ちだよ。」


と答えると、夏子は嬉しそうな表情を浮かべた。


そして俺の腕に抱きついてくる。とても切なそうだった。




「また来るからね。約束だよ♡」


夏子は涙が落ちるのを我慢して、無理やりに笑顔を作った。


そんな彼女を冬馬は愛おしく思った。


「もちろんだ。また一緒に会おう。」




夏子は名残惜しそうに自分の家へ帰っていった。


冬馬は手を振りながら、彼女の後ろ姿を見送った。


切ない気持ちで一杯だった。





彼女が帰ると、静寂が訪れた気がした。


さっきまでの出来事が夢だったかのような錯覚を覚えるほど、


静かな空間が広がっている。 しかし唇にはまだ彼女の温もりが残っていた。


(本当に不思議な子だったな)


冬馬はそう思いながら、ベッドに入ることにした。 そして眠りについたのだった。


(一人でいるのが一番と思っていたのになぁ。 こんな気持ちになるなんて…。 )



○○○○○○


これでPHASE1は終了となります。やっぱり経験が豊富でないのが

バレそうな文章になってしまいますね。精進したいです。(何を?)

簡単でもいいのでコメントとかあると嬉しいです。

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